2012年6月8日金曜日

医療や医学を医師や学会の手に戻せないのでしょうか

昨日のブログ「低腎機能患者の把握に統一した指標」をアップしたところ、東京で治験関係の仕事をしている娘から「医学が医師の手に戻れば良いのに…」とメールを貰いました。さすがに私の娘です。言いたいところをよく理解してくれています。

腎臓学会はeGFRを使ってCKD患者の管理をしてゆこうと努力しています。腎機能低下例における造影剤使用をどうするのかという議論も、新規抗凝固薬を低腎機能患者にどう使用するのかという議論も腎臓学会が考えるeGFRを使用して考えれば混乱は起きません。しかし、昨日書いたように新規抗凝固薬の管理にはクレアチニンクリアランスを用いるように製薬メーカーはアナウンスし、PMDAや厚生省はその方針で認可を行っています。CKDの患者の管理で、腎臓学会以上の権威は製薬メーカーや厚労省に存在するんでしょうか?権威のないものが医療の現場を決める訳ですから医学や医療が医師の手に戻ればよいのにと考えるのは自然です。

循環器分野でも、今年の診療報酬改定で循環器学会やCVITからIVUSとFFRの併用を認めてくれるように厚労省に申し出を行いました。結果、認められませんでした。PCIの適応を決めるFFRと適応が決まってからのより良いPCIを実施するために行うIVUSは全く違う役割を持っているにもかかわらず認められなかったのです。この認められないとの決定は、FFRやIVUSの意味を十分に理解した権威が行ったものでしょうか。あるいは医学を知らない官僚が行ったものでしょうか?岐阜ハートセンターの松尾先生やIVUSの本江先生や、和歌山の赤坂先生以上の権威が日本に存在し、併用する意味を否定したのでしょうか?そんな権威が日本に存在するはずがありません。日本の医学や医療は医師の手の中にないのです。

何時か見たフランスのDES使用の記事ではAというDESではAMIに対して有用だというきちんとしたRCTがあるので保険償還可能であり、BというDESにはこうしたRCTがないので保険償還は認められないというような決定を学会が行っているとありました。医師の手の中や学会の手の中に医療は存在するのです。日本で医師が問題を起こした時にその処分は厚労省の医道審議会で行われます。フランスでは医師会です。フランスだけではなく多くの国で、医師の自律は重んじられ、医師会で医師の処分は行われています。医師の自律です。日本の医師には自律はできないのでしょうか。日本でも弁護士の処分は自律的に弁護士会が行っています。海外の医師にできて、日本の弁護士にできることが日本の医師にはできないというのでしょうか?そんなに日本の医師はバカばっかりではないと信じています。ただ余りにも、政治に依存し、時の政権に媚びへつらってきた弱虫かもしれませんが…

その分野の最高権威が、権威のないものに対して認可をお願いするような構造が良いとは思えません。医師会や学会は医療や医学を自らの手の中に取り戻すための努力を求められているのではないでしょうか。

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