2012年6月12日火曜日

「ご一緒にポテトはいかがですか」という商法はもう流行らない

昔、親戚の女子大生がマクドナルドでバイトをしていました。細かなマニュアルがあり、店の外の掃除ができたり、「ポテトはいかがですか?」等と言えるようになると、帽子の色が変わり時間給も変わると教えてもらいました。その女子大生も50歳を超えたので30年以上前の話です。時は下って、現在です。小学6年生の息子がたまに食べたいというので、今でもマクドナルドに出かけることがあります。しかし、「ポテトはいかがですか」と聞かれることは全くなくなりました。かつては、そう言うようにマニュアルに書かれていたものが、マニュアルから消えたのでしょうか?

売り上げは客数X客単価です。ポテトはいかがですかと尋ねられることで、ハイと返事をしてしまう人は少なくなかったと思います。するとマクドナルドにとっては、利益率の高いポテトが労せずして売上げられるので、客単価も利益率も上がりで、良いビジネスモデルであったのだと思います。こうしたことについてはいくつかのビジネス関係のブログで取り上げられていますが、「ポテトはいかがですか」と聞かれる理由はXXですよと書いてあるだけで、最近の言わなくなった理由に言及しているものはありません。ビジネス指南と言っても、最近の動向に疎く、古いコンセプトでコンサルティングをしているのだと、底が知れます。「ポテトはいかがですか?」というのは、客単価よりも支持してくれる客数を増やすことに戦略をシフトしたからだと理解しています。

冠動脈CTや冠動脈造影で、この程度であればPCIは必要ないだろうと明らかにわかるケースに、念のためにIVUSやOCT・FFRをしてみましょうというのは正しいのでしょうか?適応が微妙なケースでFFRを実施することにもちろん異議はありません。不必要なPCIを実施するくらいなら、手間をかけてでもしない根拠を見つかる価値があると思っています。しかし、その場合にもしない根拠を明らかにするためのコストが、PCIを実施するコストを上回ってはいけないと思っています。本日のCAGのケースですが#6に75%狭窄を認め、自覚症状としての胸部不快感もある方でしたがFFR: 0.85であったためにもちろんPCIは実施しませんでした。有床診療所でDPCではなく出来高で算定する当院では、請求点数は32000点、32万円程度です。一方で、DPCの病院では約50000点、50万円になります。同じ手間(コスト)をかけて、より大きな利益が出る構造にすることで、不必要にもかかわらず、「ポテトはいかがですか?」のようについでにFFRやOCTを見ておきましたということにならないかを心配しています。

多くの公費がつぎ込まれている医療の分野では、最小の費用で最大の効果を発揮する努力をするべきだと思っています。出来高払い制度の問題を解消するためと思っていたDPCの制度で、出来高払い制度以上のポテトの押し売りのような医療が展開されることを危惧します。こうした、労せずして利益を生む構造が、意味のある検査であるOCTやFFRの価値を損なってしまうのではないかと危惧します。

もうマクドナルドでも止めてしまった「ポテトはいかがですか?」的な商法は医療の分野では止めた方が良いと思っています。

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