Thursday, September 29, 2011

冠動脈CT検査のプロトコールを変更することにしました。 ニトログリセリンとコアベータの使用

Fig. 1 LAD evaluated with 64-row MDCT
  87歳の男性。近医でCOPDで加療中です。労作時の息切れが最近悪化した由で初診です。COPDの悪化の可能性もありますが、COPDにはよく狭心症が合併します。COPDの所為だと安易に判断しないで冠動脈を評価するようにしています。CTでみた冠動脈がFig. 1です。前下行枝の近位部に高度狭窄を認めます。すぐに入院していただき2剤の抗血小板剤のローディングを開始しました。

  Fig. 2は、冠動脈造影像です。PCIになるものとばかり考えていましたのでNTG投与下の造影です。#6には50%狭窄しかありません。

Fig. 2 Left Coronary Artery after NTG IC
このCTによる評価と冠動脈造影での評価の解離の原因は何なのでしょうか。誘発をしていませんので想像でしかありませんが、CTの撮像時にはspasmが発生していたのかと思います。この方は労作時の呼吸苦の悪化だけではなく夜間の胸部症状で覚醒したとも言っておられました。仮にFig. 1がspasm発生時のCT所見だとすると、spasmの発生していない時の画像と比較すると、spasm発生時のCT所見はさらに明らかになります。興味がありますが、興味のためにCTをすぐに撮るわけにはいきません。、50%狭窄の評価をいつかする時にしっかりとspasmをコントロールをして撮影してみようと思います。


今まで当院での冠動脈CT検査時に、検査前のニトログリセリンは使用していませんでした。多くの病院で使用しているにもかかわらず使用していなかった理由は、折角ベータブロッカーの内服で心拍数が落ちてきたものがNTGの使用でまた心拍数が上がり、冠動脈の評価の質が落ちるのではないかと危惧したからです。こうした心拍数の変化で検査時間が延長することもいやでした。

しかし、今回のような例を見ると冠動脈CT前にNTGの使用は避けて通れないものと思えます。明日以後の冠動脈CT撮影時にはNTG舌下を先行させるプロトコールに変更することにしました。心拍数のコントロールには最近、冠動脈CT用に使用が認められたコアベータを使用するつもりです。この方法で検査をすればいつ効いてくるかわからない内服のベータブロッカーの効果発現を待たなくても済みます。

これで冠動脈CT検査のthrough putが改善すれば患者さんにとっても鹿屋ハートセンターにとっても幸いです。

7 comments:

  1. 本当にCT像はspasmをとらえたと考えていいのでしょうか.
    是非NTG後のCTも取られてご呈示いただければ幸いです.
    CT像はpositive remodelingはかなりみられますね.
    遠位部近位部の血管内径と病変部の内径の比較ではやや造影不良があり,細く見えるもののCAGに近い画像と比較的近いと考えられないでしょうか.
    自分ならCTほど意外にたいしたことなかったとスルーしそうなところを深く追求されていて脱帽でした.

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  2. CTを撮影して高度狭窄を確認し、抗血小板薬のローディングを行った
    後に造影してみると「あれ?そんなに狭くない・・・」ということは
    稀ならず経験します。病歴やCT所見はACSを示唆します。薬物治療で
    血栓が消失したケースではないかと愚考しました。

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  3. 匿名様、こてつ様 コメントをありがとうございます。話が長くなるのでブログの記事にします。また、コメントをお願いします。

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  4. いつも楽しくブログを拝見しています。冠動脈CTAを拝見させて頂きましたが、ほかの匿名さまが仰っている陽性リモデリングを伴う中輝度プラーク病変とご推察します。CPR像の中心線がトレースされていると理解すると、CAGでは50%狭窄程度に見えますが、ISDNなしでの初回のアンギオはどうだったのでしょうか? IVUSの所見は(プラークは)どうだったのでしょうか? すごく気になります。 CAG像との乖離は器質的な病変に冠れん縮の素因が加わったように想像されます(単なる血管拡張不良という言い方もあります) 心臓CT(SCCT, SCCT Japan IRC)のガイドラインでも検査前の亜硝酸剤の投与が推奨されています。CAGでの冠注ほど効果はありませんが、今後必須の前処置だと思います。 付け加えると、心臓CT検査時にニトログリセリンを使用されているようですが、緊張していると口渇もあり、しっかり溶けないままにスキャンしてしまう高齢者がときどき経験されませんか? ニトログリセリンや亜硝酸剤のスプレー剤の方がいいかと思います(心拍数が全く変化しないのは結果拡張が乏しいか効果が弱い患者さんの可能性もあります) また、抗血小板剤剤で溶けるような血栓がCT値のみで判断できるのでしょうか? CTでのアテローム血栓と動脈硬化の鑑別は困難かと思います。 先生には愚問ですが、spasmを期待してのCTスキャンはリスクを伴う検査にもなります。 また経過を教えて下さい

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  5. はじめまして。技師をしております。
    先生にご教授願いたいのです。
    当院でも64列(GE optima660)導入し冠動脈CTはじめました。
    院長がコアベータを70心拍以上で使用するようつげられました。
    小野薬品の方からとりあえず説明はききましたが、その中の使用法に
    1.ニトロ投与 5分以上間隔あける
    2.コアベータ一分間投与
    3.4~7分の間に冠動脈CT撮影する
    4.15分ほど安静にしてから帰宅
    との情報がありました。
    本等で調べると、ニトロは2分で血中濃度上昇し、4分でピーク。よって検査は5分後に。半減期は8分。
    施設によっては、ニトロを使うと4分以降心拍上昇がおこるため、本番はその前の投与3分で行う、
    等の記載ありました。

    これを考えると、小野薬品の推奨プログラム(1~3)は、ニトロの効果が薄れてからの検査になるのではないでしょうか?
    と、思い質問いたしました。

    またコアベータ一分間投与は守るべきでしょうか?
    また検査後の安静度はいかがなものでしょうか?(看護師にいつでも異常を知らせることができれば院内はフリー、OR
    処置室で安静等)

    宜しくお願いいたします。

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    1. 先生お礼遅くなり申し訳ありませんでした。
      体の調子悪く入院しておりました。

      私の休みの間にルーチン的なものが完成しておりました。
      まだ納得いかないのですが・・・・

      まず、単純→ニトロ→2~3分でコアベータ→以上なければコアベータで心拍落ち着いたところで
      テストインジェクション→本番
      です。

      病院は、九州ですのでまた見学等を上役に相談して可能でしたらその時は
      宜しくお願いいたします。

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  6. 当院でコアベータを使い始める前には、メトプロロール40mg(かつてはセロケン、今はロプレソール)の内服を使っていました。
    コアベータを使い始めて当初はこのメトプロロールを止めていましたが、コアベータで脈拍数が落ちないケースが多いこと、値が張ることから、再びメトプロロールを使い始めました。
    1)レートが70以上のケースでメトプロロールを内服。
    2)脈拍が60程度であればニトロペン舌下後様子を見てレートが上がらなければ撮影
     元々レートが早いケースやニトロでレートが上がるケースではニトロ舌下後5分程度でコアベータを1分間で静注

    という流れです。でもなかなかレートが下がらないケースでは体重に関わらずコアベータの残りをIVしています。

    CTの結果は当日説明するので待合室で待ってもらっています。解析終了までですので1時間程度でしょうか?CT結果の説明時に医師の前に来るのでこの時の様子ををチェックして帰宅です。

    optima 660導入直後でしたら、GEさんに言えば当院の見学に連れてきてくれると思いますが…
    北は北海道から南は沖縄の病院まで、便利の悪い鹿屋に見学にこられていますよ。

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