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鹿屋ハートセンターでは現在200名以上の方に対してワーファリンによる抗凝固療法を行っていますが、個々の患者さんのデータをExcelに入力し、個々の患者さんのTTR(iTTR)を計算していません。ですから施設のTTR (cTTR)も当然計算していません。
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例外的に%TRが本当のTTRよりも高くなる場合は図3のようなケースです。治療域を横断するような変動がなく治療域の上下でうろうろする場合です。このように%TRが本当のTTRを上回る場合がない訳ではありませんが、現実のケースではこのようなケースは発生しません。図2のような場合には当然ワーファリンの量を増やすからです。
%TRを算出するのは簡単です。個人の%TRなら過去の検査結果を数えて割り算するだけなので1分もかからずに暗算で算出できます。また施設の平均%TRを見るのも簡単です。施設の平均%TRは、全測定機会の何%が治療域に入っていたかです。全患者のある期間の測定機会が3000回だったとします。治療域に入っていた回数が2100回であれば、個別に%TRを算出しその平均を出さなくても施設の%TRは70%に決まっています。また3000回で見なくてもそのうちの100回をランダムに抽出して見れば、%TRが70%の施設であれば100回のうち70回は治療域に入っていることが確認できる筈です。
現在、鹿屋ハートセンターには毎日10名強の方がワーファリンを処方されて通院されています。最近では、治療域を逸脱するPT-INRを見ることは1日に1人いるかいないかです。ですから最近の鹿屋ハートセンターの平均%TRは90%を超えていると思っています。以前は70%程度だったのが90%を超えるようになった理由は簡単です。%TRの低い方のほとんどでワーファリンによるコントロールを止めてNOACによる抗凝固療法に変えたからです。
NOACの成績が語られる時、良好にコントロールされたワーファリン群と比べて同等ないし良好な有効性を示し、安全性は上回っていると言われますが、図4に示すようにせいぜい60%程度のコントロールです。通院されている方で見れば、10人の患者さんがいたら毎日3-4人の方が治療域を逸脱しているようなコントロールです。その程度のコントロールのワーファリンと比べて良い成績でしたと胸を張るのは少し違うかなと思っています。
次回は鹿屋ハートセンターの設定した1.6-2.6というPT-INRの目標域で、かつ70%を超える%TRで得られた2年のフォローアップの成績を基に議論を進めようと思います。
新井先生 いつも勉強になる記事、ありがとうございます。当院でも薬剤師さんを中心に、昨年1年間のWarfarinのデータを整理していただいて、表4に比べ、「思ったよりいいコントロール」という印象です。出血性イベント、血栓性イベントについてもNOACメーカーの提示データよりもよいコントロール下においての比較もみてみようと考えています。
返信削除確かに、コントロール不良群はNOACに移行しましたので、今後、どのようにデータ集積がされるかというところも気になります。