鹿屋市医師会では相当な危機感をもって対策を打たねばと考え4月末から新型コロナ対策委員会を立ち上げました。私もメンバーの一員になりました。鹿屋市医師会が危機感を持った理由は、鹿屋市を含む大隅半島の医療供給能力が脆弱だからです。新型コロナ以前、感染症指定病床は鹿屋市に4床しかありませんでした。現在は、あと4床は受け入れようと決まり8床です。また、仮にもう少し、受け入れを増やしたとすると、通常の救急を含む診療体制が維持できないのではないかと危惧したのです。
大隅半島内には緊急の心臓手術ができる病院は1か所しかありません。1か所で整形外科や脳外科もあり多発外傷に対応できる病院もありません。大隅では不十分な診療体制を複数の医療機関が協力し補完しあってなんとか救急に対応できる体制を維持してきました。何でもできる病院がない状況で施設の垣根を越えて協力し合う仕組みを鹿屋方式と呼んできました。その一つ一つが大切な役割を担っている施設で新型コロナ対応のために機能が低下してしまえば普段の救急診療にも支障が出ると危惧したのです。
新型コロナ委員会では、県や市が新型インフルエンザ特措法に基づく行動計画を作成する前に医師会の行動計画を作成しました。また、陽性者を早期に発見し感染を拡大させないために医師会で運営するPCRセンターも5月7日には開設しました。上段の図は、PPEなしでも検体採取できるように作成した検査用のボックスです。鹿屋市の理解を得て鹿屋市の予算で作成しました。移動可能であり、一度に大勢の検査が必要になった時にはその施設に持って行くことも可能です。
次に取り組んだテーマは介護施設での大規模クラスター発生を予防する、あるいは発生した時に医療機関がパンクしないための協力体制の構築です。6月から医師会と介護施設の団体との協議を重ねてきました。鹿屋市内の入所施設に入所する利用者は約3000名です。人口10万人の町ですから3%の方は入所者なのです。ここで大きなクラスターが発生すれば、たちまち医療崩壊です。下の図は、もうすぐ開催される入所施設向けのPPE着脱訓練と入所者に対するACP取得のための勉強会の告知です。介護施設への感染経路は、面会者・職員による持ち込み、入所者の施設外への受診時の持ち帰り、新規入所時くらいしかありません。その経路を断つ努力の意識付けを施設と医師会で共同で行いたいと考えています。また、実際に発生し、入院ベッドが確保できないような状況が生じても、それゆえに感染拡大させないための感染管理の勉強です。勉強はすべての入所施設が対象でオンラインで行いますが、大隅地区の感染症認定看護師が希望する施設には出向いてゾーニングのアドバイスをするよう計画しています。また、今の段階から発症した場合、入院を希望するのか住み慣れた施設での療養を希望するのか入所者や家族の意思を確認してゆきます。
崩壊が起きてから慌てるよりも、崩壊しないように準備しておく方が良いに決まっています。ひっ迫していない今だからこそすべきことだと考えています。そのためには医師会の努力だけでは足りません。市などの行政や、それまで関係が希薄であった介護施設との連携が不可欠です。そうした連携を模索できる今の鹿屋市の問題意識を素晴らしいと感じています。そんな積み重ねが、感染拡大や医療崩壊を防ぎ、市民の不安の解消に繋がれば言うことはありません。
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