2020年12月27日日曜日

医師会長は正月休みを取るのかと批判し現場で働けという人たちはそんな批判で現場は救えると思っているのでしょうか?

 新型コロナの影響で出張して参加する学会もなくなり、ずっと鹿屋にいます。今年はお盆休みも取らなかったので2020年年明けから日曜日も含めて1日も休まず、今日(2020.12.27)まで患者さんを診ています。移動の時間がないので時間の余裕があります。色々なことを考えます。

医療崩壊するリスクを言い、国民に自粛を求める医師会長は、正月休みを取るのかと批判する人がいます。医師会長はご自身のクリニックは休診であっても、休まずにコロナ対策に取り組んでおられるだろうと私は思いますが、批判する人たちは誰もが前線で働けと言いたいようです。新型コロナのせいでいやな世の中になったものだと思っています。新型コロナの現場で働く医師、新型コロナは診ないけれど通常の心筋梗塞などの救急の現場を維持する医師、現場で解決できない制度的な問題の是正に取り組む医師会の幹部や行政の中にいる医師など役割分担をせずに、大変な時期だからみんなで竹やりをもって前線に行くべきだというような意見に感じられます。そんな戦いに勝ち目はないだろうと思っています。

二十数年前、私は神奈川県鎌倉市の病院から福岡県の病院に転勤しました。驚きました。私を含めて8名の医師が循環器のチームにいましたが、深夜に急性心筋梗塞が来ると全員集合で緊急カテーテルをするのです。午前3時に全員が集まり、術者の治療を見るだけで、その後休息も取らずに朝からの診療をするのです。全員が疲弊してしまいます。私は責任者になると仕組みを変えました。当直医とオンコールの医師だけで緊急カテーテルに対応するようにしたのです。2人で手に負えない時には私を呼び出しても良いが、他の医師は呼び出してはならないとしました。疲弊していない医師を温存し翌日以後の診療に支障がないようにするという仕組みです。戦力の逐次投入とも異なります。私たちの医療の世界の戦いに最終的な勝利はありません。勝って終わりではなく、次の瞬間にはまた新たな戦いが始まります。一人の医師が疲弊しているのだから全員が分かち合って同じように疲弊すべきというような発想では、安定して良質な医療は提供し続けることはできません。

イタリアやニューヨークでの第一波で、疲弊した医師がマスクの跡が残る痛々しい姿でStay Homeを呼びかけました。それに共感し、Facebookのプロフィール写真にStay Homeと記している人も少なくありません。医師会長がStay Homeを呼びかけることに反発があるのは現場の医師の呼びかけではなく幹部の呼びかけだからでしょうか?私は医師会長がStay Homeを呼びかけることについて全く異論はありません。ただ、Stay Homeを呼びかけるだけでは不足だと思っています。政策に影響を及ぼす力を持っているのですから、現場で汗をかかなくても良いから、汗をかいて疲弊している医療者を救うための制度改革を実現するために役割を果たしてほしいと思っています。新型コロナがあぶりだした日本のいびつな医療提供体制がこの機会に是正でき、災いを転じた明るい未来(国民にとっても医療者にとっても)が待っていると思いたいものです。

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