私たちが実施しているカテーテルによる侵襲的な治療は、受けてたった半年で5%もの人が重大な問題を起こす治療なのでしょうか?鹿屋ハートセンターでは、半年以内に死亡したり心筋梗塞になったりという方をここ10年ほどは経験したことがありません。10年ほど前には、稀にステント血栓症を起こす方がいましたが、最近は皆無です。自分のやっている治療の経過とこの論文の結果の違いに驚いています。
では、なぜ研究に登録された患者では問題が多く起きたのでしょうか。欧米では日本の違ってIVUSできちんと拡張されたかなどを評価せずにステント植え込みがなされることが主流です。では、不十分で適切ではない治療が原因でしょうか?それならば2年以後に保存的な治療よりも成績が改善する理由が分かりません。
ここからは、私の妄想です。科学的な根拠もデータもありません。患者さんの薬の飲み残しをこの2年ほど調べてきました。なので、そこに情熱を持っているが故の我田引水、手前味噌です。下の図に示すようにステント植え込みを受け抗血小板剤を処方されている患者さんでも10%を超える残薬を認めました。ステント血栓症が起きれば死に至るリスクが高いと口を酸っぱくして話してきたにもかかわらずです。もし、研究の対象になった方々もきちんと内服していないとすれば、ステント植え込みを受けて抗血小板剤を内服していない方では、ステント植え込みをしていない人よりも血栓症による死亡リスクは格段に高くなります。そこを生き延びた人であれば時日が経過し、ステントが新生内膜に覆われるにつれ、抗血小板剤をきちんと内服していなくてもステント血栓症のリスクは低下し、狭窄を解除していない薬だけの人よりも拡張した効果で成績が上回ると考えました。全くの我田引水で科学的な証拠はありませんが、この仮説を立てて考えるとISCHEMIA試験の結果は納得できるのです。
ISCHEMIA試験の結果を受けてカテーテル治療など無意味だという医師も出てきました。しかし、保存的な治療で十分だとは言えないと思っています。たった2年で両群とも9%もの人が心血管死、心筋梗塞等を起こしています。ISCHEMIA試験の結果が正しいとしてもその解釈はいまだ冠動脈疾患に対する良い治療はないとすべきだと思います。私の解釈は違います。きちんとしたカテーテル治療に加えて適切な処方をきちんと内服してもらえれば望ましい経過を得られるというヒントを得たと解釈しています。
多くのRCTできちんと内服できていたか、残薬率は何%であったかなどが語られることはありません。患者の行動を知らずに統計だけで語られる「EBM」に懸念を覚えずにはおれません。
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