Wednesday, January 18, 2012

Everolimus Eluting Stent(Xience, PROMUS)植込み後の2剤の抗血小板剤投与

2011年5月18日付当ブログ「予断を排して、正しい診断に至る道」と2011年5月26日付当ブログ「LMTに対する治療 CABGかPCIか?」に記載した方が脳出血を起こされ近くの脳外科病院に入院されました。LMTにステントを植え込んだために2剤の抗血小板剤(プラビックス75㎎とバイアスピリン100㎎)を内服してもらっていました。更に不安定な発作性心房細動がありワーファリンも内服してもらっていました。脳出血を発症される前の直近のPT-INRは1.57でした。脳外科入院時のINRも1.6だったそうです。幸い、脳出血は軽症で意識もはっきりしておられマヒも軽いとのことです。

冠動脈内ステントの導入は、PCI後の急性冠閉塞を激減させPCIの安全性を格段に向上させました。また、薬剤溶出性ステントの出現によって再狭窄も劇的に減少し、PCIを完成した治療にしたと思っています。とはいえ、この治療成績は2剤の抗血小板剤(DAPT)の内服に支えられて達成されています。このため内服しないリスクよりも小さなリスクですがDAPTによって脳出血や消化管出血を起こすリスクは高まります。このためインターベンションに携わる医師にとってDAPTをいつまで続けるかは重要なテーマです。ましてこの方は、ワーファリンまで内服していましたからこれら3剤が脳出血のリスクになっていたことは間違いがありません。低いINRの目標で管理してきたつもりでしたが、出血は防げませんでした。


Impact of the Everolimus-Eluting Stent on Stent Thrombosis: A Meta-Analysis of 13 Randomized Trials. J Am Coll Cardiol 2011 Oct 4; 58:1569.

昨年10月のJACCに掲載されたMeta-Analysisでは、各種の薬剤溶出性ステントの比較でEESが他のステント(SES, PES, ZES)と比較してステント血栓症の発生が低いことが示されました。また、TVRも低いことが示されました。

当院で現在使用している薬剤溶出性ステントは、EESであるPROMUS、ZESであるEndeavorとNoboriです。このうち90%ほどはPROMUSを使用しています。PROMUSを使用し始めてもうそろそろ丸2年が経過しますが、当院でもステント血栓症の発生はPROMUSでは起きていません。再狭窄率も2%程度です。2010年12月13日付当ブログ「LADのCTOに対するretrograde approach」に記載した方は、フォローアップ中に外来受診を一時的に自己中断されたために1か月のDAPTの中断がありましたが閉塞は免れました。現在この方はバイアスピリンのみでフォローしています。

まだ印象に過ぎませんが、DAPTを早期に中止できることを売りにしているZESと同様にEESでDAPTの早期中止は可能かもしれません。本日 記載した方はLMTに対するEES植込みなのでDAPTの中止はためらわれるところですが、リスクの低い方や当院にすぐに駆け込める方などからDAPTの中止を試みたいと思っています。

No comments:

Post a Comment