Fig.1 Left Coronary Artery evaluated by 64-row MDCT |
この方の場合、冠動脈CT検査を実施することで、突然死という形にならずに左冠動脈主幹部病変を発見できましたが、危ない所であったと考えています。
第一に、発作性心房細動という診断があったことです。胸部の不快感を説明する一つの疾患が存在した場合、そちらの症状と決めつけてしまうことはよくあります。発作性心房細動があるにもかかわらず、そちらが原因と決めつけずによくCTを撮ったものだと思います。電子カルテ上ですぐに分かる過去の検査履歴で冠動脈の評価を当院ではしていなかったので一度はしてみるかというくらいの意識でしたが、撮影して正解でした。
この方は4年前に他医で冠動脈造影を受けて問題なかったと言われています。50歳代の女性の狭心症は、決してありふれている訳ではありません。女性であればこのくらいの年齢で狭心症になるのは少数です。まして過去に大丈夫と言われていることが、判断にバイアスを加えてきっと大丈夫だろうと判断してしまいがちです。CTより閾の高い検査である冠動脈造影しか検査方法がなければ、きっと私も冠動脈の評価はしなかっただろうと思います。
もう一つ、この方でCT検査をためらわせる要因は、メルビン(メトホルミン)を内服していたことです。腎機能正常の比較的若年のDMですからメルビンを第一選択薬として使用していました。メルビンの内服下のヨード系造影剤の使用は、かつては禁忌とされ、現在は併用注意です。いつもはメルビンを内服している方の造影剤を用いる検査の場合は数日間の休薬をしています。数日間の休薬をしてまで検査をするとなれば検査の敷居は高いものになります。
このように複数の敷居があるにもかかわらず、検査しようと決断した過程が自分でも不思議です。こうした敷居に阻まれて検査をしていなかったらきっと突然死という形で知らせを受け取ったことだろうと思います。私にもこの方にも「運」があったと非科学的に思ってしまいます。この「運」を無駄にしないためにも、この方には元気になってもらわなければなりません。
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