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Fig. 1 7m after stenting |
4年半前に労作時の胸痛で受診されました。 #6の完全閉塞で、そこに側副血行を送る#4PDに90%狭窄を認めました。Fig. 3に示すようにPCI前の負荷心電図ではV3-6で著明なST低下を認めます。#4PDを介してLADに良好な側副血行が出ているわけですから非常に重要でリスクのあるPCIです。幸いにもうまくCypherを植え込むことができました。Fig. 3の右のPCI後の負荷心電図ではST低下はもはや認めません。
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Fig. 2 54 m After stenting |
私はステントのない時代からPCIに関わってきましたが、運動耐容能が上昇はするもののPOBA後の負荷心電図は陽性であり続けるケースが多く、冠動脈の拡張だけではすぐに虚血が解除されないのかと当時は思っていました。その頃、負荷心筋シンチも担当していましたので、POBA後の負荷心筋シンチもたくさん経験しましたが、やはり再分布が多く、POBAだけでは虚血は解除されないと思っていました。このシンチにおけるTlの再分布現象は、長期の虚血後の心筋代謝が血行再建後すぐには改善されないためなのか、POBAによる拡張が不十分であるためなのかしばらく疑問に思っていました。でも今では疑問はありません。POBA時代とは異なり、きちんとステントを植え込んだケースでは負荷心電図で虚血の所見は得られないことがほとんどだからです。かつてのPOBA後の負荷心電図陽性、心筋シンチでの再分布現象は不十分な拡張によるものであったのだろうと信じています。
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Fig. 3 Ex. ECG before and After stenting |
こうして負荷心電図でのST低下もなくなり症状もなくなった方ですが、再び労作時の胸痛が出てきました。負荷心電図も陽性です。Fig 1は#4PDのPCI後7か月後、Fig. 2はその4年後、今回の造影です。#2に透亮像のように見える高度狭窄です。この4年間、ずっとストロングスタチンを内服していましたが、再発を防げませんでした。幸い、合併症なく#2にPROMUSの植え込みを行えました。
この方の側副血行は#4PDから全く同じ血管径でLADに心尖部で繋がっており、RCAの狭窄がなくなると負荷心電図で陽性所見も出なくなるほどです。しかし、一旦、RCAに狭窄が生じると強い虚血所見と自覚症状が出てきます。もし、RCAが粥腫破綻などで急性閉塞すれば優位な右冠動脈と前下行枝の同時虚血ですから致命的になります。PCIで目の前の虚血は解除できても粥腫破綻は防げない訳ですから、いつまでもRCAの血行再建で症状が取れるからと言ってLADの完全閉塞を放置していてはいけないと思います。
LADにLITAを繋いだ時にこの虚血も起こさないほど良好な側副血行に打ち勝って、LITAはよく流れるでしょうか。またEpicardの側副血行を通してLAD totalを開けに行くのが良いのでしょうか。よく考えなければなりません。
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