17時に訪ねてこられたMRさんが、昨日のブログも見ましたよ言ってくれました。こう言われると悪い気はしません。色々と話しました。その前に訪ねてこられた呼吸器の営業マンは、アポも「つかみ」も無しに、わが社の製品の紹介に来ましたと言ってこられたので、話も聞かずに帰っていただきました。「つかみ」があるのとないのとでは営業マンの成績が変わる筈です。
色々と話をした、MRさんが、鈍感力というのは慎重に対処するという意味ですかと聞くので、慎重と言えば慎重だけど少し違うんだよなと考えました。
昨日のケースでPCIをしなかった理由はOCTがなかったからではありません。OCTでmalapositionと血栓付着を確認しても、後日のPCIにしたと思います。昨日書いたように、LCXに向けてバルーンを拡張した時にLCXに向けてno reflowが発生し、かつLADに塞栓を飛ばすかもと心配したからです。そうしたリスクを回避できる良いアイディアがない限り冒険できないと思っています。ただし、血行動態が破綻している時は、リスクを冒さないといけません。
ワイヤーを通して、IVUSやOCTをするぐらいは良いのですが、バルーンを拡張すると一線を越えてしまいます。解離やno reflowや末梢塞栓を起こすかもしれません。バルーンを拡張するか否かは大事な一線です。後戻りできない一線です。カエサルは反逆者とみなされるルビコン川を越えました。勝利しローマを手中に収めるか、自らが滅ぼされるかの一線がルビコン川であった訳です。この時、勝利の戦略と勝算があったからこそカエサルはルビコン川を越えた筈です。勝利するための戦略と勝算がなくては、PCIの世界でも一線を越えてはならないと思っています。
航空用語に離陸決断速度というのがあります。これを超える速度に達したのに、離陸を断念すると滑走路内で停止することができずにオーバーランしてしまいます。離陸決断速度を超えたにも関わらず離陸を断念した1996年の福岡空港におけるガルーダ航空機事故はこのケースです。この誤った判断で、死者も出る大惨事になりました。一線を越えたら、一線を越えた対処が必要です。一線を越えるか否かの判断、一線を越えた後の対処の能力がPCI術者には求められます。
cross the line(一線を越える)、Point of no return(PNR)、離陸決断速度(V1)、cross the Rubicon river(ルビコン川を渡る)等、表現はいくつもありますが、PCIの術中にあるルビコン川を軽視ししないことを鈍感力と表現したつもりです。単純な慎重とは一線を画す概念と思っています。
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