2010年10月2日土曜日

なぜOptima CT660proなのか 機種選定にまつわる色々

新規導入したOptima 660 pro

Workstationは新旧2台が稼働

 高額医療機器の購入にあたって考えなくてはならないことはたくさんあります。勤務医時代には最高スペックを求めたものです。しかし、自らがオーナーになって導入する場合には身の丈に合ったものでなければなりません。
 4年前に16列を導入した時には、対象となる患者さんが導入コストに見合うだけ存在するかも分らなかったわけですからとても64列を導入する決断はできませんでした。開設から4年を経過した今は、非有意狭窄であったために経過を見ている方や、PCI実施後何年も冠動脈造影をしていない方など対象となる方が少なからず通院されています。それでも田舎の小さな施設ですので、1日に何人も対象となる方がいらっしゃるわけではありません。
 昔からよく知っている大阪の大病院で勤めている先生は64列導入にあたって1日7人のCT検査を目標に設定されました。また北九州の循環器で有名な病院は64列導入にあたって設定した目標は20人とうかがっています。
 1億円の機器をリース設定した場合、年間リース料はおよそ2千万円で6年間支払うことななります。これとは別に保守料や、時に管球の交換が必要であり平均すると1500-2000万円程度が1年に必要になります。この年間3500-4000万円の負担とは別に電気代や人件費が発生します。冠動脈CTの診療報酬は1万4千円、冠動脈加算をとっている場合には2万円です。当院では1万4千円ですから4000万円をペイするためには年間2850人程度の検査が必要になります。これだと日曜祝日を除き、土曜日まで含めて毎日10人の方の検査をしてトントンという計算です。実際の問題として鹿屋ハートセンターにはこれほど多くのCTを必要とする方はいらっしゃいません。1億円のCTは鹿屋ハートセンターの身の丈に合っていないということです。身の丈に合わない投資をすれば持続可能な施設を作り上げるという目標を達成できません。それでも採算を追い求めるのであれば検査の不要な方に検査を実施して、良心を裏切らなくてはなりません。良心を裏切る選択を私は決してしたくありませんので、やはり1億円のCTの導入は無理だということになります。
 今回のOptima CT660proに決定した理由は、身の丈に合っていたからです。鹿屋ハートセンターに通っておられる方、今後通われるであろう方に、決して無理せずに必要な時期に検査を受けていただくだけでトントンになるだけの初期導入費用、ランニングコストを提案していただいたために導入を決めることができました。もちろん安かろう悪かろうでは話にはならないので、このブログの場でその質は検証してゆきたいと思っています。
 CTの時代のトレンドは64列を超えた更なる多列化です。ホームページで見ると東芝のCTの製品情報のトップの機種はzone detectorを使用した320列相当の機種、Phillipsのトップの機種は256列、Siemensはdual energyです。これらの機種に手が届かないのは分かっているので実際の導入価格の相場も知りませんが、1億の機種でも最低1日10名の検査が必要なのに数億の機械を導入してペイする医療機関は日本にいくつ存在するのでしょうか。ちなみにGEのCTの紹介のトップの機種は当院が導入したOptima CT660proです。もちろんGEにもdual energyの技術や多列のCTがあるにもかかわらず、トップの紹介はOptima CT660proなのです。明らかに他社と方向性が異なるように私には見えます。日本の診療報酬の実態にそぐわない高額医療機器の普及は、病院の経営を圧迫するだけではなく、日本の医療体制全体にも負荷をかけかねません。患者に対する不要な検査にも繋がりかねません。そのなかでHealthymaginationEcomaginationを社是とするGEの社風も今回の決定の大事な要素であったと考えています。

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