Saturday, April 16, 2011

繰り返す心不全患者における腎動脈狭窄の評価 Evaluation of Renal Artery Stenosis in Patients with Recurrent Cogestive Heart Failure

Fig. 1 Renal Arterial PSV
  前回のブログに書いた「繰り返す心不全に対する看護介入」の方は72歳の男性です。2/11付のブログで少し言及した2/10に緊急PCIを実施した方です。2/10に緊急で前下行枝近位部完全閉塞と、右冠動脈近位部の99%狭窄にステント植え込みを行い、救命できた方です。安定した状態で、心エコーで評価すると左室拡張末期径は60mm、左室駆出率は50%程度です。2/21付のブログに書いたように両側の浅大腿動脈の閉塞があります。CREは1.15mg/d lですから、CKD 3です。


Fig. 2 Left renal Artery evaluated by MDCT

Fig. 3 Right Renal Artery evaluated by MDCT

左心機能が若干低下し、左室もやや拡張していますがこの程度で心不全を繰り返すのだろうかという疑問が残ります。この疑問に対する一方の答えは、よほど生活習慣に問題があるのだろうということです。そこを看護介入で解決してゆこうというのが前回のブログの考え方です。一方で、他に心不全を繰り返す身体的な問題はないのだろうかということも忘れずにチェックしなければなりません。冠動脈に2枝病変があり両側SFAの閉塞です。腎動脈に問題はないのかとエコーでの腎動脈PSVのチェックを行いました(Fig. 1。) 右腎動脈のPSVは180.1cm/sと亢進しており、大動脈の流速が34.9cm/sと遅いために、RARは5.16と高値です。一方、左のRARは1.34と標準的な値です。左腎の長径は7.7cmと委縮しており、左の腎機能は期待できません。残りのひとつの腎臓を灌流する右腎動脈の狭窄が繰り返す心不全の原因の可能性が高いものと判断しました。 Cardiac Disturbance Syndromeです。生活習慣の問題だけではなくこのように身体的な問題も併せて存在すると、看護介入だけでは問題は解決しません。看護介入に加えて、腎動脈に対する介入 Intervention が必要です。


 

ガチガチの全身の動脈硬化、残りの一腎に対するインターベンションですから、インターベンション時の合併症の発生は、両側の腎機能の廃絶、腎不全を惹起しかねません。慎重な対処が必要です。腎動脈の性状をCTで評価することにしました。Fig. 2に左腎動脈、Fig. 3に右腎動脈を示します。右腎動脈は入口部で90%狭窄、狭窄部のdensityは低く、distal emboli の可能性も十分に考えられます。左腎の委縮を考えれば、distal emboli による右腎の機能低下を防ぐためにDistal protection が必要だろうと考えました。一方の左腎動脈にも近位部に50-60%程度の狭窄を認め、また、そのdistal に2か所の高度狭窄を認めます。こちらはエコーによるPSV の評価では全く発見できませんでした。これは、左腎の機能が廃絶しているために起きた現象でしょうか、あるいは少しdistal の病変であったために評価できなかったのでしょうか。後者であれば、PSVのみによるスクリーニングでは、このような少し末梢の病変は見逃しているということになります。繰り返す心不全患者における腎動脈の評価の戦略を考え直さなければなりません。



 

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