Fig. 1 Sever calcified leion before PCI |
Fig. 2 After PROMUS stenting in Pt with sever calcified LAD stenosis |
昨日書こうとしていたのは2/5付ブログに載せたAf患者の#6狭窄のケースです。2/9にPCIを行いました。この方にはMDCTを行っていませんでした。長い慢性心房細動の病歴がある方ですが、最近になり労作でドキドキがひどくなったという訴えです。心房細動患者が労作でドキドキを訴えられたからといって安易に心房細動に原因を求めてはいけません。長い病歴なのに急に悪化したのはなぜかと考えると、冠動脈疾患ではないかと思えます。冠動脈石灰化を評価してもよいのですが、なにか心房細動だけでは説明できないという予感で入院していただきました。科学的ではありませんが、典型的ではなくても感じる「狭心症らしさ」の感覚です。MDCTのない時代、この「狭心症らしさ」を根拠に負荷心電図陰性でもCAGを行うケースは少なくありませんでした。科学的ではなくてもこの「狭心症らしさ」を根拠にCAGをしても、正診率は決して低くありません。MDCTの普及で、「狭心症らしさ」を感じ取る能力が鈍らなければと良いがと思っています。
Fig. 3 IVUS image after PROMUS stenting |
Fig. 1はPCI前の造影です。この写真では判然としませんが、冠動脈3枝が石灰化のために造影をしなくても確認できます。2/4の診断カテ時には普段のようにAd hoc PCIにしませんでした。この石灰化が原因でPCIが不成功に終わり、緊急CABGになる可能性を考えたからです。私自身には200例ほどのRotablatorの経験がありますが、当院では施設基準の関係でRotablatorは実施できません。
Rotablatorが実施できる病院に紹介しようかとも最初からCABGをお願いしようかとも考えました。Rotablatorが必要な患者さんが見つかれば私は、信頼する宮崎市郡医師会病院のS先生にお願いするようにしています。また、CABGは近くの大隅鹿屋病院のN先生にお願いするようにしています。結局この方の場合、自分でPCIをすることにしました。一つの根拠は、#6の近位部でありステントを持ち込むにあたって抵抗となる距離が短いと考えたからです。frictionの距離が長い#7であったり、LMTから急角度でLADが分岐するような方だとステントを持ち込めない可能性が高くなります。そうした状況が予測されるようならCABGないしRotablatorです。
バックアップをしっかりと確保するためにガイディングカテはEBU3.5です。ワイヤーを通過させ、試しに2.5㎜バルーンを通過させようと思いましたが全く通過できません。次いでTerumoのTAZUNA 1.25mmX10mmを選択し、通過が可能になりました。1/19付ブログCTOで通過性に関して最も信頼しているのはMedtoronicのLegend 1.25mmだと書きましたが今回はTerumoです。選択の理由はRBPです。Terumo TAZUNAは14atm、Medtronic Legendは12atmだからです。硬いことが予想されるためより耐圧性の高いバルーンを選択したのです。
通過の後の課題は、拡張可能かどうかです。Tazuna 1.25㎜で14atmで拡張した後、通過に抵抗のあったバルーンの出し入れに全く抵抗はなくなりました。先ほど通過しなかった2.5㎜ Tazunaは今度は容易に通過です。やはり14atmで拡張しますが今度はindentationが取れません。やはり硬いのです。このためすぐにステント植込みを行わずにやはりTerumoのHiryuにバルーンを替え、18atmでindentationが取れました。ここでようやくPROMUSを出しステント植込みです。選んだサイズは2.75mmです。LADの近位部ですから少なくとも3.0㎜にはしたいところですがPROMUS(Xience V)のバルーンはコンプライアンスの高いバルーンです。硬くて拡張できないがために、拡張圧を上げてゆくとコンプライアンスが高いために予想を超えて拡張してしまう可能性があります。それに備えた選択が2.75㎜です。2.75㎜で拡張後のIVUSでは十分な拡張は得られていませんでした。このため今度は3.0㎜にTerumo Hiryuで高圧の後拡張です。Fig. 2のPCI後の造影、Fig 3のPCI後のIVUSともに納得のゆく結果でした。
2/9付のブログでは10分のPCIを書きましたが、この方のガイディングカテのエンゲージから抜去までは約40分です。IVUSもしないでさっと終わるPCIとIVUSを駆使して時間をかけて結果を得るPCIとではどう戦略の立て方が違うのでしょうか。経験・患者情報・デバイスの特性、予想される合併症などから組立てられる論理的な思考がやり方を変えさせます。それでも起こるvarianceに対処する準備も必要です。この方の場合、拡張できず、flowが落ちてきた場合に備えて、大隅鹿屋病院のN先生に緊急バイパスになるかもしれないと伝えてありました。普段は検査しない血液型もチェックしていました。うまく拡張できましたとN先生に連絡しながら、心臓外科の先生がバックアップしてくれていることが、PCIの戦略を立てる意味でも重要だという認識を深めました。
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