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Fig. 1 US findings before PTRA |
9/16に 当院での21例目、26件目のPTRAを実施しました。#6の90%狭窄が原因の不安定狭心症の方です。不安定狭心症も冠動脈を拡げてしまえば安定しますが、腎動脈狭窄は不安定狭心症のリスクでもあります。重篤な冠動脈疾患に合併する腎動脈狭窄はPTRAの適応であろうと考えています。とはいえ、ただ狭いだけでは適応にはなりません。PSVは282cm/s、RARは4.00の方です。この方は、冠動脈の拡張後にも胸部症状を訴えておられました。鹿児島の表現で言えば「胸がジージーする」ですし、広く九州では「胸がどうかある」と表現されます。腎動脈狭窄の方の中に、こうした胸部症状を訴える方が少ないないという印象です。また、PTRA後この症状がなくなることが多いと印象を持っています。
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Fig. 2 Before PTRA |
この方を含めて21例のリスクファクターは高血圧が17例(81%)、糖尿病が11例(52%)、脂質異常が17例 (81%)と当院でPCIを受けている方よりもリスクが多い印象です。PTRAの適応は、難治性高血圧が8例、心不全が6例、重症冠動脈疾患が7例と、必ずしも全例が難治性高血圧ではありません。
意外だったのはこの21例でクレアチニンが1.2以上のケースは2例(9.5%)のみでCREの上昇は発見のきっかけになっていないかったということです。
日本高血圧学会のガイドラインによれば、腎動脈狭窄は全高血圧患者の1%、剖検された心筋梗塞患者の10%、心カテを受ける患者の7%、重症頸動脈疾患患者の27%に認められるとされています。
一方、今回の21例から見ると冠動脈疾患患者から見つけているので当然と言えば当然ですが、重症冠動脈疾患患者は19例(90%)に認められました。間欠性跛行を呈する下肢閉塞性動脈硬化症は9例(43%)認め、IMTが2㎜を超える頸動脈狭窄は17例(81%)認められました。
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Fig. 3 After PTRA |
冠動脈疾患患者の中の頻度、頸動脈狭窄患者から見た頻度はそう高くなくても、動脈硬化性腎動脈狭窄患者から見ると、冠動脈疾患患者、頸動脈狭窄患者の頻度は少なくありません。こうして考えると動脈硬化性腎動脈狭窄は、全身の動脈硬化の最終の表現として表れているとも思えます。
腎動脈狭窄にまで至っているのに、気づかずに放置していると、脳梗塞や虚血性心疾患の急なイベントの発生を招きかねません。動脈硬化性腎動脈狭窄の存在は、虚血性の脳・心臓の急なイベントの大きなリスクであろうと思います。
また、入野先生の思い出です。私が脳卒中診療部時代に入野先生は、「何を投薬しても血圧の下がらない患者はすぐに脳卒中になる」とよく言っておられました。こうした現象が動脈硬化性腎動脈狭窄を介して起こっていたのなら、30年ぶりに納得です。
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