Friday, September 2, 2011

心配すると杞憂に終わり、油断すると痛い目にあう 昨日のケースのPTRAを実施しました。

Fig. 1 Before stenting
 昨日9/1付当ブログに書いたケースのPTRAを本日実施しました。昨日ブログを書いた時点で既に、本日実施することは決めていました。ブログを書く前も、書いている最中も、書いた後もずっと、ガイディングカテはエンゲージできるだろうか、病変が硬くバルーンが拡がらない事態は起きないだろうか、拡がったは良いけれども動脈破裂や末梢塞栓は起きないだろうか、ステントは持ち込めるだろうかと心配していました。

Fig. 2 After sten
いつもは、4/26のブログに書いたように右のジャドキンスで腎動脈を確保し、ワイヤーを挿入、そのワイヤーを支えにガイディングカテをエンゲージさせるのですが、今回はガイディングカテの中に診断カテを入れ、ワイヤー挿入後にエンゲージさせたガイディングカテから診断カテを抜くというオーソドックスなCatheter Exchangeで腎動脈を確保しました。Aguru 0.014 wireでは狭窄の後の拡張部を超えた後の急峻なカーブを超えることができなかったために冠動脈用のTerumo runthrough extrafloppy 0.014を使用し、末梢まで確保です。次いでIVUSで評価します。狭窄部の血管径は4.5㎜-5.0㎜です。distal protection deviceを使用しない拡張ですので3.0㎜で前拡張しました。血管はすぐにIndentationも取れ末梢の血流の障害なく3㎜に拡がりました。次いでGenesis18㎜を末梢から2本中枢部において終了です。

  ことのほか、スムースに合併症なく拡張できました。Distal protectionをしなかった理由は、狭窄部を超えて末梢まで持っていく自信がなかったことと、バルーンやフィルターをどこに置けるかデザインできなかったためです。このために、術前に末梢塞栓が起きて厳しい場面になるのではないかと危惧していたわけです。

予想される合併症に対して十分な対策を講じてインターベンションに臨むというのはインターベンションをする医師にとって基本的な考え方です。しかし、十分な対策を講じることができない状況で手を出さなければならない場面も少なくはありません。本日のケースは屈曲の存在や、狭窄部位が比較的遠位であったためにDistal protectionができないだろうと思っていました。また、腹部大動脈瘤の存在や他の硬い動脈硬化から、大動脈の問題が起きるのではないかとか拡張後にExtravasationが起きるのではないかとずっと心配していました。

非科学的な、話をします。1時間もかからない手技のために何時間も心配します。すると不思議なことに予想した合併症はあまり起きません。一方、こんなのは簡単な手技だと思って安易に臨むと予想しない合併症に遭遇し、慌てることになります。「心配すると杞憂に終わり、油断すると痛い目に合う」です。

何時間も心配し、悪いことばかり考えて、本人やご家族に安易な手技ではない旨をお話しします。この手技には一般的に○○%のこうした合併症があると言われていますというような形式的な説明ではありません。自分が心から心配していることをお話しするのです。こうすると不思議なことに神様が助けてくれるようです。

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