2010年10月から2011年2月まで精力的にstent fractureについてブログを書きました。以後、ほぼ1年この問題について書いてきませんでした。
長く書かなかった理由の一つは、最近の薬剤溶出性ステントでめっきりとfractureを見なくなったからです。もう一つの理由はPMDAの体質です。
PMDAの国民の声という欄に何故、黒塗りなどするのかと問い合わせた後のPMDAの医療機器承認情報の検索画面が上段の図です。「本情報の内容を情報提供者に無断で複製、転載、頒布する等の行為を禁じます。」という一文がこの検索画面に表示されるようになりました。別にこの脅しに屈したわけではないのですが、呆れて書く気を失ったというのが本音です。
「この法律は、国民主権の理念にのっとり、法人文書の開示を請求する権利及び独立行政法人の諸活動に関する情報の提供につき定めること等により、独立行政法人等の保有する情報の一層の公開を図り、もって独立行政法人等の有するその諸活動を国民に説明する義務が全うされるようにすることを目的とする」と独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律の第一条に書かれています。この理念に基づき情報が公開され、インターネット上で誰もが見られるようになったのです。インターネット上に公開した文書を頒布することを禁じますというのはどのような神経なのでしょうか。インターネット上に公開した情報はもう既に国民のものでPMDAが口をはさむ余地のない情報と思えるのですが、霞が関の役人にはそのようには思えないようです。このような感覚の官僚にこのようなことは止めましょうよと言っても無駄に思えて書くのをやめたのです。
黒塗りは問題ではないのかとPMDAに問い合わせた後に承認されたステントの承認文書が中段です。ステントのクロッシングプロファイルの規格も測定結果も黒塗りです。真面目なPCI術者なら当然知っておきたい情報を明らかにすることでこの法人の競争上の地位は脅かされるでしょうか。以前にも書きましたが、優れた製品の規格や、その試験結果も公表されることでその法人の競争上の地位を高めますし、国民の利益にも一致します。PMDAは、法人のためにもならない、国民のためにもならない黒塗りをいつまで続けるつもりなのでしょうか。
最下段はFDAが、薬剤溶出性ステントの認可を行った際に、メーカーに送った書類です。この承認書類にはもちろん黒塗りはありません。また、承認した責任者の氏名とサインも記載されています。日本の承認書類にはこのような責任者の氏名は出てきません。
行政の無駄をなくせ、薬や医療機器の承認をスピードアップさせろ等の理由でPMDAは創設されたと理解しています。しかし、出来上がった組織は誰のためにもならない黒塗りを実行し、FDAのように責任者の名前を出すような組織ではありませんでした。このような官僚機構の体質を是正せずに行う行政改革っていったい何なのだと思うのが今回の久しぶりに書くfractureの記事です。かつての自民党政権時代にこのような問題に気付いたら、民主党の議員さんにこんなことはおかしいと思わない?と問題提起が可能でした。今はどうでしょう?こんな行政機構っておかしいでしょって言っても行政側に行ってしまった民主党は役に立たないでしょう。一方でそちら側に帰りたい自民党の皆さんも取り合ってくれないことでしょう。チェック機構が失われたことが2009年の政権交代を実現させた衆議院選挙の結果であったと考えれば、現在の政治の閉塞感の理解は容易かもしれません。