冠動脈内ステントの導入は、PCI後の急性冠閉塞を激減させPCIの安全性を格段に向上させました。また、薬剤溶出性ステントの出現によって再狭窄も劇的に減少し、PCIを完成した治療にしたと思っています。とはいえ、この治療成績は2剤の抗血小板剤(DAPT)の内服に支えられて達成されています。このため内服しないリスクよりも小さなリスクですがDAPTによって脳出血や消化管出血を起こすリスクは高まります。このためインターベンションに携わる医師にとってDAPTをいつまで続けるかは重要なテーマです。ましてこの方は、ワーファリンまで内服していましたからこれら3剤が脳出血のリスクになっていたことは間違いがありません。低いINRの目標で管理してきたつもりでしたが、出血は防げませんでした。
Impact of the Everolimus-Eluting Stent on Stent Thrombosis: A Meta-Analysis of 13 Randomized Trials. J Am Coll Cardiol 2011 Oct 4; 58:1569.
昨年10月のJACCに掲載されたMeta-Analysisでは、各種の薬剤溶出性ステントの比較でEESが他のステント(SES, PES, ZES)と比較してステント血栓症の発生が低いことが示されました。また、TVRも低いことが示されました。
当院で現在使用している薬剤溶出性ステントは、EESであるPROMUS、ZESであるEndeavorとNoboriです。このうち90%ほどはPROMUSを使用しています。PROMUSを使用し始めてもうそろそろ丸2年が経過しますが、当院でもステント血栓症の発生はPROMUSでは起きていません。再狭窄率も2%程度です。2010年12月13日付当ブログ「LADのCTOに対するretrograde approach」に記載した方は、フォローアップ中に外来受診を一時的に自己中断されたために1か月のDAPTの中断がありましたが閉塞は免れました。現在この方はバイアスピリンのみでフォローしています。
まだ印象に過ぎませんが、DAPTを早期に中止できることを売りにしているZESと同様にEESでDAPTの早期中止は可能かもしれません。本日 記載した方はLMTに対するEES植込みなのでDAPTの中止はためらわれるところですが、リスクの低い方や当院にすぐに駆け込める方などからDAPTの中止を試みたいと思っています。
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