Monday, March 5, 2012

Optimal Medical Therapyとは何なのかの議論が必要だと思います

Fig. 1 CAG 7M ago
40歳代前半の方です。 2008年に胸痛を主訴に受診され、MDCTでRCAにplaqueは認めるものの有意狭窄ではなく冠攣縮性狭心症だろうとの判断でCa拮抗剤を内服してもらっていました。初診時のLDLは180でしたが、リバロ 1mgの内服でLDLは82-104でコントロールされていました。2011年8月に内服下で胸痛がありCAG施行。#6-7の90%狭窄と#13の90%狭窄に対して薬剤溶出性ステントの植え込みを行いました。この時のRCAがFig. 2です。#1-2に50%程度の狭窄を認めます。

Fig. 2 Today's CAG
8月のPCIのF/UのCTを3月になって撮像のところ、右冠動脈に高度狭窄を認めました。このため、本日のCAGです。Fig. 2に示すように#1-2はわずか7か月で高度狭窄に進行しています。このような例は少なくありません。IVUSで観察すると別にlipd poolがあるわけでもなく一様なfibrous plaqueです(Fig. 3)。この所見であればdistal emboliはないかもしれませんが拡張した(positive remodelingした)右冠動脈はdistal emboliのhigh riskですので、念のため5㎜のFiltrapでdistal protectionを行ってのstentingです。大きなバルーンでの前拡張を行うと薬剤溶出性ステントの3.5㎜では浮いてしまうと考え、direct stentingです。Stenting後に5㎜のバルーンで後拡張を行いました。どの段階でもslow flowは起こらず、取り出したFiltrapにも何もtrapされていませんでした。

Fig. 3 IVUS before PCI
この方の血圧は常に120程度で初診から経過しています。DMもなく、LDLも80-100のコントロールですから一応、optimal medical therapy(OMT)が達成できていたと考えられます。2011年6月7日付の当ブログ「冠動脈疾患患者に対するOptimal Medical Therapyは本当にOptimalなのでしょうか」でCourage trialに触れました。OMTを実施した上でPCIをしてもしなくても5年後の死亡率と心筋梗塞の発症には差がないという論文です。この論文の発表の後、予後も改善しないのに無駄なPCIをやりまくるインターベンション医という批判を同じ循環器医からも受けるようになりました。本日のケースが未然に治療できなかった場合、予後を改善しなかったのはPCIなのでしょうか、あるいはOptimal Medical Therapyなのでしょうか。どう考えてもPCIの敗北ではなく、OMTの敗北であったと思われます。

こうした例は2011年6月3日付当ブログ「スタチンによる十分な脂質管理下でも発症する急性冠症候群」でも紹介しました。OMTとは何なのかの議論が必要です。スタチンを投与しLDLが十分に低下していることや、血圧がコントロールされているだけではOptimalではなさそうです。Beyond statinの研究が進むことを期待したいですし、その成果が出るまではstatinに対する過度の期待は危険だと思えます。

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