平成18年の鹿屋ハートセンターの開設時に、最も悩んだのがCTを導入するか否かです。大きな債務を背負っての開設ですから少しでも初期投資を抑えたいと思うのは当然です。開設前に色々と知恵をお借りした豊橋ハートセンターの鈴木孝彦先生はCTなど不要だとその当時は言われました。悩んだ挙句、当時は冠動脈を評価する上で最も高規格であった64列MDCTではなく、なんとか冠動脈を評価できる16列MDCTを導入することにしました。これでも、当時は清水の舞台から飛び降りるような決断でした。
2年前の平成22年9月に、まだリースも終わっていないのにこの16列MDCTから64列MDCTに機種を変更しました。もちろん、毎月の固定費は上昇します。1年前の平成23年2月にもう一つの決断をしました。64列MDCTで多くの場合、PCI後の評価は可能なので、PCI後の評価に冠動脈造影を実施することを止め、64列MDCTのみによる評価にすることとしました。このことに関しては2011年2月3日付当ブログ「PCI後の冠動脈造影を原則しないと決心しました」に書きました。当然、医業収入は低下します。もう一つ、平成23年に決心したことはほぼ全職員の基本給を上げたことです。
経営の基本は「出るを制して入りを図る」です。固定費を抑えて、収入増を図るというのが基本です。しかし、3つの全く正反対の決断(出るを増やして、入りを抑える)を平成22年末から平成23年初めにかけて決断しました。こんな方針で1年を乗り切れるのだろうかと平成23年の1年間は不安で仕方がありませんでした。
医療法人化の準備をしているものの、まだ個人の施設である鹿屋ハートセンターです。決算は1-12月で、確定申告は3月です。今回の申告では平成23年の収入は、予想した通り平成22年と比較して数千万の減収でした。率にして8%ほどです。一方、税引き前利益は平成22年と比較してわずか数十万でしたが増益でした。数千万の減収にもかかわらず利益が横ばいであった理由はカテーテルでの評価を止めたことによるカテーテル等の材料費の減少です。
カテーテルによる評価しかなかった時代はカテーテルを積極的に実施するのは当然でした。しかし時代は変わりました。でも、カテーテルを生涯の仕事としてきた自分にとってカテーテルを減らすというのは大きな決断でした。悩んだ決断でしたが、64列以上のMDCTが導入されればほとんどの場合、カテーテルによる評価は不必要だと確信できました。日本全体で医療費の増大が問題にされる中で、鹿屋ハートセンターに関わる医療費は8%減です。医療(機器)の高度化による医療費の増大ではなく、医療費の縮小が達成できました。もちろん、これは鹿屋ハートセンターを受診される方の負担も減少したことを意味します。
1年半前の64列MDCTの導入も決断までに相当に悩みましたが、医療費を縮小させ、患者さんの負担を減少させ、ハートセンターの経営にはマイナスにはなりませんでした。良い決断であったとホッとしています。
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