2012年7月25日水曜日

CAGを見て考えること、CTを見て考えること、OCTを見て考えること

Fig. 1 ECG during chest pain
 60歳代後半の男性、早朝の胸痛で来院されました。来院してしばらくして強い胸痛があり心電図を撮るとFig. 1のようにII, III, AVF, V5-6に著明なST上昇を認めます。NTGの舌下で速やかにSTは正常化し、ヘルベッサーの内服で以後胸痛は起こりません。

同日のCTをFig. 2に示しますが左冠動脈回旋枝末梢に強い狭窄を認めます。

Fig. 3はPCI前の造影です。やはりCXのdistalに強い狭窄を認めます。CXの狭窄の近位部には壁不整を認めますが、有意な狭窄は認めません。

Fig. 2 LCX evaluated with MDCT
著明なST上昇ですのでこの狭窄が心電図異常の原因なのか、これとは別にRCAにスパスムを起こすのだろうかと考えていましたが、この部位のPCI中にinflationを長めに行い、心電図変化を見たところ、自然発作と同様のST上昇を認めたのでこの狭窄が責任病変だと判断しました。

Fig. 4は初回のバルーニング後のOCT像です。バルーニング前のOCTでは高度狭窄のために狭窄部の評価はできませんでした。バルーニング後のイメージですのでバルーンによる解離かもしれませんが、ruputureしたThin-cap Fibroateroma(TCFA)のような像が見てとれます。同様の Thin-cap Fibroatheromaのような像は狭窄の近位部にも見て取れます。

かつて当ブログでMDCTで冠動脈を評価するようになって有意狭窄ではない冠狭窄が多く見つかることからスタチンの投与が増えたと記載しました。しかし、この方のCTでは狭窄の近位部にTCFAに相当するような像は認めません。もちろんCAGでもです。

Fig. 3 Left Coronary Artery Before PCI
Fig. 4 OCT imaging after the 1st balloon inflation
OCTでTCFAを認めれば当然、強力にスタチンで治療しようと考えます。しかし、これがCAGのみの評価やCTのみの評価ではこのような行動には繋がらないかもしれません。

CAGだけで評価するよりもCTで評価をした方がスタチンの必要な方が多く見つかります。更にOCTで見ればより多くの方にスタチンが必要だと分かります。どのような方にスタチンが必要で、一人一人にとって何がoptimal medical therapyなのかは、簡単ではありません。

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