2020年8月12日水曜日

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防ぎ、感染拡大による医療崩壊を起こさないための鹿屋市医師会の行動、介護施設との協同。そんな努力ができる鹿屋市が誇らしい。

 7月以後、PCR陽性や抗原陽性者の数が増え続けています。4-5月の緊急事態宣言を上回る増加です。重症者が少ないから状況はひっ迫していないという人もいますが、ひっ迫してからでは遅いと思っています。

鹿屋市医師会では相当な危機感をもって対策を打たねばと考え4月末から新型コロナ対策委員会を立ち上げました。私もメンバーの一員になりました。鹿屋市医師会が危機感を持った理由は、鹿屋市を含む大隅半島の医療供給能力が脆弱だからです。新型コロナ以前、感染症指定病床は鹿屋市に4床しかありませんでした。現在は、あと4床は受け入れようと決まり8床です。また、仮にもう少し、受け入れを増やしたとすると、通常の救急を含む診療体制が維持できないのではないかと危惧したのです。


大隅半島内には緊急の心臓手術ができる病院は1か所しかありません。1か所で整形外科や脳外科もあり多発外傷に対応できる病院もありません。大隅では不十分な診療体制を複数の医療機関が協力し補完しあってなんとか救急に対応できる体制を維持してきました。何でもできる病院がない状況で施設の垣根を越えて協力し合う仕組みを鹿屋方式と呼んできました。その一つ一つが大切な役割を担っている施設で新型コロナ対応のために機能が低下してしまえば普段の救急診療にも支障が出ると危惧したのです。

新型コロナ委員会では、県や市が新型インフルエンザ特措法に基づく行動計画を作成する前に医師会の行動計画を作成しました。また、陽性者を早期に発見し感染を拡大させないために医師会で運営するPCRセンターも5月7日には開設しました。上段の図は、PPEなしでも検体採取できるように作成した検査用のボックスです。鹿屋市の理解を得て鹿屋市の予算で作成しました。移動可能であり、一度に大勢の検査が必要になった時にはその施設に持って行くことも可能です。

次に取り組んだテーマは介護施設での大規模クラスター発生を予防する、あるいは発生した時に医療機関がパンクしないための協力体制の構築です。6月から医師会と介護施設の団体との協議を重ねてきました。鹿屋市内の入所施設に入所する利用者は約3000名です。人口10万人の町ですから3%の方は入所者なのです。ここで大きなクラスターが発生すれば、たちまち医療崩壊です。下の図は、もうすぐ開催される入所施設向けのPPE着脱訓練と入所者に対するACP取得のための勉強会の告知です。介護施設への感染経路は、面会者・職員による持ち込み、入所者の施設外への受診時の持ち帰り、新規入所時くらいしかありません。その経路を断つ努力の意識付けを施設と医師会で共同で行いたいと考えています。また、実際に発生し、入院ベッドが確保できないような状況が生じても、それゆえに感染拡大させないための感染管理の勉強です。勉強はすべての入所施設が対象でオンラインで行いますが、大隅地区の感染症認定看護師が希望する施設には出向いてゾーニングのアドバイスをするよう計画しています。また、今の段階から発症した場合、入院を希望するのか住み慣れた施設での療養を希望するのか入所者や家族の意思を確認してゆきます。


崩壊が起きてから慌てるよりも、崩壊しないように準備しておく方が良いに決まっています。ひっ迫していない今だからこそすべきことだと考えています。そのためには医師会の努力だけでは足りません。市などの行政や、それまで関係が希薄であった介護施設との連携が不可欠です。そうした連携を模索できる今の鹿屋市の問題意識を素晴らしいと感じています。そんな積み重ねが、感染拡大や医療崩壊を防ぎ、市民の不安の解消に繋がれば言うことはありません。

2020年6月6日土曜日

1本のステントが、患者さんの人生を変える、そこを目撃するカテーテル治療医のよろこび

 7年前にステント植え込みを行った方です。7年前には50歳代でしたが60歳を超えました。現役の大工さんです。初診時の主訴は起坐呼吸でした。明確な胸痛の既往はありません。初診時の心電図はまだSTの上昇した前壁梗塞です。心筋逸脱酵素の上昇はありませんでした。2番目の図は初診時の心エコー所見です。左室拡張末期径は69㎜、左室駆出率は20%です。発症時期不明の前壁梗塞による心不全と診断しました。

3番めの図はステント植え込み前のCAGです。左冠動脈前下行枝が中隔枝のすぐ後で完全閉塞でした。幸い、再開通はうまくいきましたが、時間が経過した心筋梗塞だったのでどれほど心機能が回復するか自信がありませんでした。

もちろんCTでは経過を見ていましたが冠動脈造影は7年ぶりです。以前植え込みんだステント部位の再狭窄もなく良好な結果でした。

その下の図は最新の心電図です。以前に心筋梗塞をしたのだろうなというのは分かりますが、初診のころの心電図とは印象が異なりいわゆるおとなしい心電図です。

その下の図は最新の心エコー所見です。左室拡張末期径は58㎜とやや拡大していますが左室駆出率はなんと74%です。



ステント植え込みを行う前、行った直後にはどれほどの心機能の回復が起きるのか全く分かりませんでした。左室駆出率20%の方の人生は容易ではありません。とても大工仕事ができるとは思いませんし、安静時でも苦しみ入退院を繰り返す人生だったかもしれません。しかし、現在では、以前使用していた利尿剤もやめ、少ない内服で元の仕事が支障なくできているのです。冠動脈完全閉塞を再開通させることで劇的に心機能が回復した症例などとこうした治療の評価が定まる前であれば症例報告されるようなケースです。今ではこうしたケースは少なくないので学会報告するほどのケースではありません。今回、7年ぶりに冠動脈造影のために入院していただき、普段の通院よりは少しゆっくりとお話しできました。そして1本のステントが心機能を回復させ、初診時に心配したような悲惨な人生ではなく、本来の人生を取り戻されたことを同年代のものとして素直にうれしく思いました。私は若い先生にカテーテル治療を指導するときに、カテを持つ医師の手の中に患者さんの命があることを忘れるなと言ってきました。これからは、命だけではなく治療を受ける患者さんの人生も手の中にあることを忘れるなと言うかもしれません。










2020年5月13日水曜日

国内での経験の少ない薬剤を初めて処方し、肝を冷やしました。

 新型コロナ感染症の拡大が4月にありましたが、5月に入って新規感染者も減少傾向にあります。もちろん、もう安心というわけではないので、油断せずに毎日の診療に励みたいと思っています。

今日は、COVID-19とは違う話です。最近、アップしたペースメーカー植え込み患者に対する私の失敗に続く、やはり失敗の話です。

50歳代の男性で、拡張型心筋症の方です。左室拡張末期径は約70㎜、左室駆出率は約30%の方です。2019年に原因不明の失神発作があったために植え込み型除細動器が入っています。拡張型心筋症の方も、まったく心機能の改善が望めない方ばかりではなくβブロッカーの内服で徐々に心機能が回復し、正常化される方も少なくありません。でも、この方はβブロッカーを長く内服されていますが、心機能は回復してきませんでした。

βブロッカーを内服していても心機能は回復傾向にない、過去にアミオダロン内服下で失神発作があり、ICD植え込みを受けているという状況を見ていると何か次の一手はないものかと考えます。そこで処方を開始したのがコララン(イバブラジン)という昨年11月から日本でも使われるようになった薬です。洞結節に作用し、低左心機能患者の予後の改善が期待される薬剤です。洞調律で心拍数が75以上、βブロッカーによる治療を受けていても改善が認められない心不全のケースが投与の対象です。この薬剤を知った時に、そんな患者さんはそれほど多くなくて、鹿屋ハートセンターにいるかなとまず思いました。そんな折、この患者さんを診て、まさにこの薬剤を投与すべき患者さんだと思ったのです。この薬で過度に徐脈化するようなことはICDが入っているからあり得ないので余計に安心だと思っていました。

最上段の心電図は処方する直前の心電図です。最小容量の2.5㎎ 1日2錠の処方開始日からわずか6日後に、ドキドキすると電話で相談を受けました。すぐに来てもらって撮った心電図が中段の心電図です。持続性心室頻拍です。肝を冷やしました。意識下のショックがかからないようにVTではショックがかからない設定でしたので、このまま来られたのです。しばらくして自然に洞調律に戻りました。最下段は洞調律に戻ってすぐの心電図です。著明にQTが延長しています。この方はその後、コラランを中止し、現在では元のQTに戻っています。

私は、自分に課したポリシーとして発売間もない薬剤はすぐには使用せず、長期処方が可能になるまでの1年間に発生する副作用を見て処方を開始しようと決めています。この方ではそのポリシーに反して発売後数か月で処方をしました。そしてこの結果です。投与によって、予後が改善し、左室駆出率も改善するケースも報告されているという良い効果の話に引きずられたのです。すべての薬剤に副作用は存在します。この方が長く内服されているアミオダロンという薬でも間質性肺炎で亡くなる方もおられます。しかし、そうした副作用をよく知っているために些細な咳でも気にかけているので、間質性肺炎を起こされた方はおられますが、重篤化した方は鹿屋ハートセンターでは経験していません。やはり、自分の経験が少ない、また、国内での経験が少ない薬剤は怖いと改めて思います。

この薬剤の価値をすべて否定しようとは思いません。しかし、このようなケースがあることは報告すべきと考えましたし、処方される先生は是非、早期に心電図でQTをチェックし、また、動悸や失神の訴えに耳を傾けてほしいと思います。この患者さんご本人にも奥様にも、多くの先生にも知ってもらいたいのでブログに載せてよいかと許可を求めたところ、他の先生の役にたつなら是非ともと返事を頂いたので、公開することにしました。

新型コロナウィルス感染症に有効ではないかと取りざたされている薬剤にも不整脈を誘発させる可能性がある薬剤もあります。現場に臨む臨床医は、良い効果だけに目を向けずに、起こりうる副作用にも注意を怠ることなく、最善の結果を求め続けなければと改めて思っています。

2020年5月1日金曜日

軽症新型コロナウィルス感染症の方をホテルに受け入れて大丈夫かと心配しています。

新型コロナウィルス感染症の拡大のための医療崩壊を防ぐために軽症者はホテルで受け入れようという話が進んでいます。そんな話を聞いていて思い出されることがあります。

25年ほど前の話です。虚血性心筋症で診ていた方で50歳代の比較的お若い方でした。どの冠動脈も細く、カテーテル治療もバイパス手術もできそうにないために薬剤で診ていた方でしたが、ある日、心停止になり亡くなったのです。亡くなった時の様子をお母さまに伺いましたが、マンションの8階に住んでいたので救急隊も蘇生をしながらは狭いエレベータでは1階に下ろすことができなかったというのです。たまたま病院近くのマンションであったために病院から救急外来の医師が来てくれたが、やはり部屋の中での蘇生ですから十分な処置ができないまま亡くなったというのです。

この話を聞いてから私は高層マンションには住むまいと考えるようになりました。ストレッチャーが乗れるようなエレベーターを備えたマンションを知らないからです。院外の心停止の蘇生率は非常に低いので心停止になれば1階に住んでいようが高層階に住んでいようが一緒だという考えもあるかもしれませんが、やはり年を重ねるとわずかでもチャンスのある環境に身を置きたいと考えるのです。建築基準が改正され、タワーマンションにはストレッチャーが乗るエレベーターの設置が義務付けられない限りタワマンは私には恐怖の存在です。

軽症新型コロナウィルス感染症の方を受け入れるというホテルにはストレッチャーが乗るようなエレベーターはあるのでしょうか?在宅で急変し亡くなった軽症者がおられたようにホテルでの経過観察でも急変はあり得ると思っています。軽症者を受け入れると名前が出ているホテルにストレッチャーが乗るようなエレベーターがあることを私は知りません。私たちが目にしないだけでサービス用のエレベーターにはストレッチャーがのるのでしょうか?5月1日現在、ホテルでの急変による軽症者の死亡はないようですが、それは圧倒的に在宅者と比べて人数が少ないからではないかと心配しています。急変があったときに、そのホテルに待機している医師や看護師、行政の職員は、エレベーターに乗せることもできずどれほどつらい思いをするだろうかと思います。もちろん搬送に苦労をしてそれゆえに結果が悪くなるかもしれない患者さんのことも心配です。

発症していない濃厚接触者をホテルで受け入れるのはありだと思いますが、軽症者を設備が整っていないホテルに受け入れて大丈夫なのかと心配でなりません。簡単ではなくても武漢のような専用施設での管理が良いのではないかと昔を思い出して思っています。

2020年4月19日日曜日

院内感染対策にはハードだけではなく、そこに働く職員の意識や行動が大切だ

今回の新型コロナ禍で、感染症の専門家という方がTVによく出てきます。感染症の専門家という人はどんな人なのでしょうか?

感染症の診断の専門家、ウィルス学者、ワクチンなどを開発する予防の専門家、抗インフルエンザ薬や抗菌剤に詳しい治療の専門家、 防疫の専門家、感染の広がりを検証する公衆衛生学者など感染症の専門家といっても様々だと思います。マスコミの世界に医学を勉強した人などほとんどいないので、ごちゃまぜに専門家が出演されるのでフォーカスが定かではない印象を持っています。

2004年、私は徳洲会の専務理事に任命されました。そして当時の徳洲会理事長の徳田虎雄先生からグループ全体の感染対策の責任者になれと言われたのです。循環器の中でも冠動脈インターベンションを専門にしてきた私に、感染対策の知識などある筈がありません。しかし、徳田理事長はそんなとっぴな人事をよくする人です。任命されてできないなどとは言いたくありません。既に福岡徳洲会循環器科の部長や大隅鹿屋病院の院長の経験があった私は、できない・知らないことまで自分で考えて方針を出すのではなく、専門家の教えを乞うという方法を身に着けていました。

そこで、そんな専門家もまったく知りませんでしたが、治療の専門家より院内感染対策の専門家を探しました。結果、辿り着いた先生の一人は、日本プロ野球機構や相撲協会にアドバイスをされ、時にTVにも出てこられる現東北医科薬科大学の賀来満夫先生です。お会いした当時は東北大学の感染制御の教授でした。きさくな先生で色々と教えて頂きました。また、スマトラ沖地震で救援に伺った時にお世話になったインドネシアのハラパンキタ病院でMRSAのアウトブレークが起きた時には医局員を派遣して下さり、感染拡大を防ぐためのアドバイスなどもしてくださいました。

もう一人、院内感染対策で知り合った先生が、波多江新平先生です。今も感染環境学会の理事を務められています。明治製薬でイソジンに関わり、退社後はヨーロッパの病院の院内感染対策などを日本に広げる活動をICHG研究会を率いてしてこられました。今では誰もが使うスタンダードプレコーションという言葉も波多江先生が日本に紹介されたと聞いています。初めてお目にかかった時は、自宅近くの駅で待ち合わせをした後、自宅に寄っていけと言われ、夕飯まで御馳走になったのは良い思い出です。

2004年に専務理事になり2005年には徳洲会を辞めたので徳洲会の中での感染対策はほとんどできませんでした。しかし、波多江先生の教えを守って鹿屋ハートセンターを立ち上げました。

ここで紹介する鹿屋ハートセンターの設備は、みな波多江先生に教えて頂いたものです。

最上段の図は、すべての病室内にある手洗いです。古い設計の病院では一病棟に一つのトイレや手洗いしかないことも少なくありません。一行為一手洗いが院内感染対策の基本だといっても実行するのが難しい設計も少なくないのです。今では多くの病院の病室前にある使い捨て手袋を置いておく棚や、自動水栓、石鹸に消毒液などを置くことなども教えて頂きました。患者さんの手洗いだけではなく看護師の一行為一手洗いを実現するためのものです。

2番目の図は病室の窓です。二重窓の中にブラインドが内蔵されています。ですからブラインドに埃がつくことはありません。ブラインド内蔵ですので窓にカーテンをぶら下げる必要もありません。断熱の効果や結露予防の効果が期待できます。病室の窓さえも感染対策なのです。ブラインド内蔵の二重窓は壊れやすいと言われていたので当初は心配していましたが、開院から14年弱の期間、まったく故障はありません。

次の2つの図は病棟のトイレです。3番目の図のトイレは各病室にある車椅子も利用できるトイレです。便器は床置きではなく、壁に取り付けてあり、便器の下の掃除を容易にしています。4番目の図のトイレの床で分かりやすいかと思いますが、床材は可塑性の高い素材でできており、床材を壁側に持ち上げるように曲げてあります。直角の立ち上げにせずRをもたせて掃除を容易にしています。

 下から2番目、3番目の図は、掃除用具室と掃除用具です。掃除に使ったモップはすぐに洗濯をし、乾燥器で乾かしています。ですから、掃除用具室に雑巾臭さはありません。年に1回の業者による床洗浄以外は毎日、職員による掃除です。環境整備は医療者の責務と考えるために業者には依頼していないのです。

こんな風に鹿屋ハートセンター内で院内感染は起こさないを目標にハードを設計しました。15年前の設計です。院内感染を起こさないというこのような設計でも、外から新型コロナ感染の方が来られた時には無力です。けれども、院内感染を起こさないということを目標にした設備を目の当たりにし、毎日、そこを掃除する職員の意識は、違うはずだと思っています。新型コロナの流行を受けて、一層、手に触れる部分のアルコールや次亜塩素酸によるふき取りを徹底するようになりました。

最下段の図は、鹿屋ハートセンターのものではありません。15年以上前に掃除に訪れた病院の換気孔です。院内感染対策室もあるような病院でしたが、埃まみれで掃除もされていない換気孔でした。理論はもちろん大切ですが、その理論を活かすのはそこで働くものの意識や行動です。マスクや防護服をつけているから大丈夫なわけではありません。設計や用具といったハードだけでがなく、その正しい使用法を知ることや、患者を守るという意識や行動がなければ、感染対策の理論は絵に描いた餅にすぎません。




2020年4月17日金曜日

過而不改、是謂過矣。過ちて改めざる、是を過ちと謂う

 10年以上前に、低左室駆出率で診るようになった患者さんです。初診時の左室駆出率は37%でした。現在の左室駆出率はカルベジロールの内服を続けた結果、70%です。カルベジロール開始前から2:1房室ブロックがあり左胸にDDDペースメーカーを植え込んでいます。

植込み後3年を経て心室ペーシングが頼りなくなり、心室リードの断線と判断しました。上の図の矢印部分がリード断線部位です。このため右胸に新たにDDDペースメーカー植込みを行いました。過去にこのようなケースがあった場合には、新たな植込み手術時に古いペースメーカーはとり出していました。しかし、この時は、何を思ったか、ペースメーカーをオフにするだけで良いだろうと考えたのです。

その後、7年以上を経過し、ペースメーカーチェックも順調でした。ところが時々、ドキドキすると言われるようになりました。それで実施したホルター心電図が下の図です。下段の記録では順調に心房心室ペーシングがなされていますが、上段の記録では新しいペースメーカーの作動とは関係なく、ペーシングスパイクが出ており、T波の上のスパイクも時にキャプチャーされて、いわゆるSpike on Tの状態になっています。危険なペースメーカーによる誤作動です。当初、何が起きているか分かりませんでしたが、メーカーに問い合わせたところ、ペースメーカーをオフにしていても、電池寿命が近づくと、ペースメーカーはオンになりバックアップモードで心室ペーシングを開始する設計になっているというのです。

知らなかった私のミスです。古いペースメーカーを取り出さずにオフにするだけにしていた私が招いた危機でした。新しい側の電池寿命も近づいていたために右側の電池交換を行い、古い左のペースメーカーは取り出しました。メーカーに聞いたところ、新しい機種ではオフにしてあるペースメーカーが勝手にオンになることはないとのことでしたから、この現象はいつか消えてなくなります。ただ、このような例が他にあってはいけないと考え、患者さんの了解を得て私の失敗を公開することにしました。

失敗してしまったことに目をつむったり、隠したりしていると成長はありません。また、失敗を共有することで同じ失敗をする医師が少なくなればと思います。

失敗をした私が言うのも変ですが、誰にも失敗はあります。こんなことを考えていて思い出した言葉がタイトルの「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」です。

新型コロナの流行による経済の危機に、条件を付けて各世帯30万円を給付するという方針が閣議決定されたにもかかわらず、一律に10万円を給付すると方針が変わりました。これに対して一律10万円の支給を主張していた野党からも「朝令暮改」だと批判の声が上がっています。どちらが正しい方針かは分かりませんが、一度決めた方針だから決して変更はしないというよりも、よりよい方針があるのなら改めるという方が良いのではないかと思います。

野党の皆さんは「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」という言葉を知らないのかもしれません。

2020年4月11日土曜日

鹿児島県や鹿児島県医師会の危機感の薄さにおののいています。

 2020年4月10日現在、鹿児島県で確認された新型コロナ PCR陽性者は4名です。東京都と比べればまだ僅かです。

一方、緊急事態宣言の出された東京都では、1日に確認される陽性者は連日、最多を更新し累計1528名です。Facebook仲間の先生方の投稿をみても、医療崩壊が現実に近づいていると感じます。

最上段の図は東京都医師会のWeb siteです。危機感の高まりを感じ、都民への行動の自粛を促すメッセージには現場を担う当事者としての悲壮感も感じます。医療者として現場に立ち、自らも感染のリスクを背負いながら使命を全うしようとする姿に医師の本来のあり方を感じます。

4月10日現在、陽性者の出ていない岩手県の県医師会Web siteが二つ目の図です。やはりトップに新型コロナに関する情報のリンクがあり、県としての最新の情報は4月10日付です。

同様に陽性者の出ていない鳥取県医師会のWeb siteでは、すぐに目に留まるようなバナーはないものの新着情報の欄に書かれた最新の情報は4月10日付です。

私の住む鹿児島県はどうでしょう。最下段の図が鹿児島県医師会のWeb siteです。メインは診療報酬改定です。右隅に小さくバナーは存在します。しかし、そこから辿り着く最新の情報は3月16日付です。もちろん、日本医師会や厚労省へのリンクはあるものの県医師会としての発信はほぼひと月前が最後です。

自分の住む鹿児島県の医師会の危機感の薄さに愕然とします。鹿児島県のWeb siteも同様です。 4月10日に出された鹿児島県新型コロナウィルス感染症に係る緊急対策第2弾の、最初の項目は終息後のにホテルや飲食店で使える商品券やクーポン券を発行するという終息後の経済対策です。

1名も陽性者が出ていない岩手県も鳥取県も危機感を持っているのに鹿児島県も鹿児島県医師会も何を寝ぼけているのだと思っています。最優先は県民を新型コロナから守ることだろうと思います。

大隅半島の遅れた循環器医療を何とかしなければと考え、2000年に鹿児島に来ましたが、この体たらくをみて、果たして20年前の私の選択は正しかったのかとさえ思ったりします。しかし、後悔しても始まりません。この鹿児島のコミュニティで嫌われても、ちゃんとしましょうよと発言し続けなければと自分を奮い立たせなければいけません。