2020年6月6日土曜日

1本のステントが、患者さんの人生を変える、そこを目撃するカテーテル治療医のよろこび

 7年前にステント植え込みを行った方です。7年前には50歳代でしたが60歳を超えました。現役の大工さんです。初診時の主訴は起坐呼吸でした。明確な胸痛の既往はありません。初診時の心電図はまだSTの上昇した前壁梗塞です。心筋逸脱酵素の上昇はありませんでした。2番目の図は初診時の心エコー所見です。左室拡張末期径は69㎜、左室駆出率は20%です。発症時期不明の前壁梗塞による心不全と診断しました。

3番めの図はステント植え込み前のCAGです。左冠動脈前下行枝が中隔枝のすぐ後で完全閉塞でした。幸い、再開通はうまくいきましたが、時間が経過した心筋梗塞だったのでどれほど心機能が回復するか自信がありませんでした。

もちろんCTでは経過を見ていましたが冠動脈造影は7年ぶりです。以前植え込みんだステント部位の再狭窄もなく良好な結果でした。

その下の図は最新の心電図です。以前に心筋梗塞をしたのだろうなというのは分かりますが、初診のころの心電図とは印象が異なりいわゆるおとなしい心電図です。

その下の図は最新の心エコー所見です。左室拡張末期径は58㎜とやや拡大していますが左室駆出率はなんと74%です。



ステント植え込みを行う前、行った直後にはどれほどの心機能の回復が起きるのか全く分かりませんでした。左室駆出率20%の方の人生は容易ではありません。とても大工仕事ができるとは思いませんし、安静時でも苦しみ入退院を繰り返す人生だったかもしれません。しかし、現在では、以前使用していた利尿剤もやめ、少ない内服で元の仕事が支障なくできているのです。冠動脈完全閉塞を再開通させることで劇的に心機能が回復した症例などとこうした治療の評価が定まる前であれば症例報告されるようなケースです。今ではこうしたケースは少なくないので学会報告するほどのケースではありません。今回、7年ぶりに冠動脈造影のために入院していただき、普段の通院よりは少しゆっくりとお話しできました。そして1本のステントが心機能を回復させ、初診時に心配したような悲惨な人生ではなく、本来の人生を取り戻されたことを同年代のものとして素直にうれしく思いました。私は若い先生にカテーテル治療を指導するときに、カテを持つ医師の手の中に患者さんの命があることを忘れるなと言ってきました。これからは、命だけではなく治療を受ける患者さんの人生も手の中にあることを忘れるなと言うかもしれません。










2020年5月13日水曜日

国内での経験の少ない薬剤を初めて処方し、肝を冷やしました。

 新型コロナ感染症の拡大が4月にありましたが、5月に入って新規感染者も減少傾向にあります。もちろん、もう安心というわけではないので、油断せずに毎日の診療に励みたいと思っています。

今日は、COVID-19とは違う話です。最近、アップしたペースメーカー植え込み患者に対する私の失敗に続く、やはり失敗の話です。

50歳代の男性で、拡張型心筋症の方です。左室拡張末期径は約70㎜、左室駆出率は約30%の方です。2019年に原因不明の失神発作があったために植え込み型除細動器が入っています。拡張型心筋症の方も、まったく心機能の改善が望めない方ばかりではなくβブロッカーの内服で徐々に心機能が回復し、正常化される方も少なくありません。でも、この方はβブロッカーを長く内服されていますが、心機能は回復してきませんでした。

βブロッカーを内服していても心機能は回復傾向にない、過去にアミオダロン内服下で失神発作があり、ICD植え込みを受けているという状況を見ていると何か次の一手はないものかと考えます。そこで処方を開始したのがコララン(イバブラジン)という昨年11月から日本でも使われるようになった薬です。洞結節に作用し、低左心機能患者の予後の改善が期待される薬剤です。洞調律で心拍数が75以上、βブロッカーによる治療を受けていても改善が認められない心不全のケースが投与の対象です。この薬剤を知った時に、そんな患者さんはそれほど多くなくて、鹿屋ハートセンターにいるかなとまず思いました。そんな折、この患者さんを診て、まさにこの薬剤を投与すべき患者さんだと思ったのです。この薬で過度に徐脈化するようなことはICDが入っているからあり得ないので余計に安心だと思っていました。

最上段の心電図は処方する直前の心電図です。最小容量の2.5㎎ 1日2錠の処方開始日からわずか6日後に、ドキドキすると電話で相談を受けました。すぐに来てもらって撮った心電図が中段の心電図です。持続性心室頻拍です。肝を冷やしました。意識下のショックがかからないようにVTではショックがかからない設定でしたので、このまま来られたのです。しばらくして自然に洞調律に戻りました。最下段は洞調律に戻ってすぐの心電図です。著明にQTが延長しています。この方はその後、コラランを中止し、現在では元のQTに戻っています。

私は、自分に課したポリシーとして発売間もない薬剤はすぐには使用せず、長期処方が可能になるまでの1年間に発生する副作用を見て処方を開始しようと決めています。この方ではそのポリシーに反して発売後数か月で処方をしました。そしてこの結果です。投与によって、予後が改善し、左室駆出率も改善するケースも報告されているという良い効果の話に引きずられたのです。すべての薬剤に副作用は存在します。この方が長く内服されているアミオダロンという薬でも間質性肺炎で亡くなる方もおられます。しかし、そうした副作用をよく知っているために些細な咳でも気にかけているので、間質性肺炎を起こされた方はおられますが、重篤化した方は鹿屋ハートセンターでは経験していません。やはり、自分の経験が少ない、また、国内での経験が少ない薬剤は怖いと改めて思います。

この薬剤の価値をすべて否定しようとは思いません。しかし、このようなケースがあることは報告すべきと考えましたし、処方される先生は是非、早期に心電図でQTをチェックし、また、動悸や失神の訴えに耳を傾けてほしいと思います。この患者さんご本人にも奥様にも、多くの先生にも知ってもらいたいのでブログに載せてよいかと許可を求めたところ、他の先生の役にたつなら是非ともと返事を頂いたので、公開することにしました。

新型コロナウィルス感染症に有効ではないかと取りざたされている薬剤にも不整脈を誘発させる可能性がある薬剤もあります。現場に臨む臨床医は、良い効果だけに目を向けずに、起こりうる副作用にも注意を怠ることなく、最善の結果を求め続けなければと改めて思っています。

2020年5月1日金曜日

軽症新型コロナウィルス感染症の方をホテルに受け入れて大丈夫かと心配しています。

新型コロナウィルス感染症の拡大のための医療崩壊を防ぐために軽症者はホテルで受け入れようという話が進んでいます。そんな話を聞いていて思い出されることがあります。

25年ほど前の話です。虚血性心筋症で診ていた方で50歳代の比較的お若い方でした。どの冠動脈も細く、カテーテル治療もバイパス手術もできそうにないために薬剤で診ていた方でしたが、ある日、心停止になり亡くなったのです。亡くなった時の様子をお母さまに伺いましたが、マンションの8階に住んでいたので救急隊も蘇生をしながらは狭いエレベータでは1階に下ろすことができなかったというのです。たまたま病院近くのマンションであったために病院から救急外来の医師が来てくれたが、やはり部屋の中での蘇生ですから十分な処置ができないまま亡くなったというのです。

この話を聞いてから私は高層マンションには住むまいと考えるようになりました。ストレッチャーが乗れるようなエレベーターを備えたマンションを知らないからです。院外の心停止の蘇生率は非常に低いので心停止になれば1階に住んでいようが高層階に住んでいようが一緒だという考えもあるかもしれませんが、やはり年を重ねるとわずかでもチャンスのある環境に身を置きたいと考えるのです。建築基準が改正され、タワーマンションにはストレッチャーが乗るエレベーターの設置が義務付けられない限りタワマンは私には恐怖の存在です。

軽症新型コロナウィルス感染症の方を受け入れるというホテルにはストレッチャーが乗るようなエレベーターはあるのでしょうか?在宅で急変し亡くなった軽症者がおられたようにホテルでの経過観察でも急変はあり得ると思っています。軽症者を受け入れると名前が出ているホテルにストレッチャーが乗るようなエレベーターがあることを私は知りません。私たちが目にしないだけでサービス用のエレベーターにはストレッチャーがのるのでしょうか?5月1日現在、ホテルでの急変による軽症者の死亡はないようですが、それは圧倒的に在宅者と比べて人数が少ないからではないかと心配しています。急変があったときに、そのホテルに待機している医師や看護師、行政の職員は、エレベーターに乗せることもできずどれほどつらい思いをするだろうかと思います。もちろん搬送に苦労をしてそれゆえに結果が悪くなるかもしれない患者さんのことも心配です。

発症していない濃厚接触者をホテルで受け入れるのはありだと思いますが、軽症者を設備が整っていないホテルに受け入れて大丈夫なのかと心配でなりません。簡単ではなくても武漢のような専用施設での管理が良いのではないかと昔を思い出して思っています。

2020年4月19日日曜日

院内感染対策にはハードだけではなく、そこに働く職員の意識や行動が大切だ

今回の新型コロナ禍で、感染症の専門家という方がTVによく出てきます。感染症の専門家という人はどんな人なのでしょうか?

感染症の診断の専門家、ウィルス学者、ワクチンなどを開発する予防の専門家、抗インフルエンザ薬や抗菌剤に詳しい治療の専門家、 防疫の専門家、感染の広がりを検証する公衆衛生学者など感染症の専門家といっても様々だと思います。マスコミの世界に医学を勉強した人などほとんどいないので、ごちゃまぜに専門家が出演されるのでフォーカスが定かではない印象を持っています。

2004年、私は徳洲会の専務理事に任命されました。そして当時の徳洲会理事長の徳田虎雄先生からグループ全体の感染対策の責任者になれと言われたのです。循環器の中でも冠動脈インターベンションを専門にしてきた私に、感染対策の知識などある筈がありません。しかし、徳田理事長はそんなとっぴな人事をよくする人です。任命されてできないなどとは言いたくありません。既に福岡徳洲会循環器科の部長や大隅鹿屋病院の院長の経験があった私は、できない・知らないことまで自分で考えて方針を出すのではなく、専門家の教えを乞うという方法を身に着けていました。

そこで、そんな専門家もまったく知りませんでしたが、治療の専門家より院内感染対策の専門家を探しました。結果、辿り着いた先生の一人は、日本プロ野球機構や相撲協会にアドバイスをされ、時にTVにも出てこられる現東北医科薬科大学の賀来満夫先生です。お会いした当時は東北大学の感染制御の教授でした。きさくな先生で色々と教えて頂きました。また、スマトラ沖地震で救援に伺った時にお世話になったインドネシアのハラパンキタ病院でMRSAのアウトブレークが起きた時には医局員を派遣して下さり、感染拡大を防ぐためのアドバイスなどもしてくださいました。

もう一人、院内感染対策で知り合った先生が、波多江新平先生です。今も感染環境学会の理事を務められています。明治製薬でイソジンに関わり、退社後はヨーロッパの病院の院内感染対策などを日本に広げる活動をICHG研究会を率いてしてこられました。今では誰もが使うスタンダードプレコーションという言葉も波多江先生が日本に紹介されたと聞いています。初めてお目にかかった時は、自宅近くの駅で待ち合わせをした後、自宅に寄っていけと言われ、夕飯まで御馳走になったのは良い思い出です。

2004年に専務理事になり2005年には徳洲会を辞めたので徳洲会の中での感染対策はほとんどできませんでした。しかし、波多江先生の教えを守って鹿屋ハートセンターを立ち上げました。

ここで紹介する鹿屋ハートセンターの設備は、みな波多江先生に教えて頂いたものです。

最上段の図は、すべての病室内にある手洗いです。古い設計の病院では一病棟に一つのトイレや手洗いしかないことも少なくありません。一行為一手洗いが院内感染対策の基本だといっても実行するのが難しい設計も少なくないのです。今では多くの病院の病室前にある使い捨て手袋を置いておく棚や、自動水栓、石鹸に消毒液などを置くことなども教えて頂きました。患者さんの手洗いだけではなく看護師の一行為一手洗いを実現するためのものです。

2番目の図は病室の窓です。二重窓の中にブラインドが内蔵されています。ですからブラインドに埃がつくことはありません。ブラインド内蔵ですので窓にカーテンをぶら下げる必要もありません。断熱の効果や結露予防の効果が期待できます。病室の窓さえも感染対策なのです。ブラインド内蔵の二重窓は壊れやすいと言われていたので当初は心配していましたが、開院から14年弱の期間、まったく故障はありません。

次の2つの図は病棟のトイレです。3番目の図のトイレは各病室にある車椅子も利用できるトイレです。便器は床置きではなく、壁に取り付けてあり、便器の下の掃除を容易にしています。4番目の図のトイレの床で分かりやすいかと思いますが、床材は可塑性の高い素材でできており、床材を壁側に持ち上げるように曲げてあります。直角の立ち上げにせずRをもたせて掃除を容易にしています。

 下から2番目、3番目の図は、掃除用具室と掃除用具です。掃除に使ったモップはすぐに洗濯をし、乾燥器で乾かしています。ですから、掃除用具室に雑巾臭さはありません。年に1回の業者による床洗浄以外は毎日、職員による掃除です。環境整備は医療者の責務と考えるために業者には依頼していないのです。

こんな風に鹿屋ハートセンター内で院内感染は起こさないを目標にハードを設計しました。15年前の設計です。院内感染を起こさないというこのような設計でも、外から新型コロナ感染の方が来られた時には無力です。けれども、院内感染を起こさないということを目標にした設備を目の当たりにし、毎日、そこを掃除する職員の意識は、違うはずだと思っています。新型コロナの流行を受けて、一層、手に触れる部分のアルコールや次亜塩素酸によるふき取りを徹底するようになりました。

最下段の図は、鹿屋ハートセンターのものではありません。15年以上前に掃除に訪れた病院の換気孔です。院内感染対策室もあるような病院でしたが、埃まみれで掃除もされていない換気孔でした。理論はもちろん大切ですが、その理論を活かすのはそこで働くものの意識や行動です。マスクや防護服をつけているから大丈夫なわけではありません。設計や用具といったハードだけでがなく、その正しい使用法を知ることや、患者を守るという意識や行動がなければ、感染対策の理論は絵に描いた餅にすぎません。




2020年4月17日金曜日

過而不改、是謂過矣。過ちて改めざる、是を過ちと謂う

 10年以上前に、低左室駆出率で診るようになった患者さんです。初診時の左室駆出率は37%でした。現在の左室駆出率はカルベジロールの内服を続けた結果、70%です。カルベジロール開始前から2:1房室ブロックがあり左胸にDDDペースメーカーを植え込んでいます。

植込み後3年を経て心室ペーシングが頼りなくなり、心室リードの断線と判断しました。上の図の矢印部分がリード断線部位です。このため右胸に新たにDDDペースメーカー植込みを行いました。過去にこのようなケースがあった場合には、新たな植込み手術時に古いペースメーカーはとり出していました。しかし、この時は、何を思ったか、ペースメーカーをオフにするだけで良いだろうと考えたのです。

その後、7年以上を経過し、ペースメーカーチェックも順調でした。ところが時々、ドキドキすると言われるようになりました。それで実施したホルター心電図が下の図です。下段の記録では順調に心房心室ペーシングがなされていますが、上段の記録では新しいペースメーカーの作動とは関係なく、ペーシングスパイクが出ており、T波の上のスパイクも時にキャプチャーされて、いわゆるSpike on Tの状態になっています。危険なペースメーカーによる誤作動です。当初、何が起きているか分かりませんでしたが、メーカーに問い合わせたところ、ペースメーカーをオフにしていても、電池寿命が近づくと、ペースメーカーはオンになりバックアップモードで心室ペーシングを開始する設計になっているというのです。

知らなかった私のミスです。古いペースメーカーを取り出さずにオフにするだけにしていた私が招いた危機でした。新しい側の電池寿命も近づいていたために右側の電池交換を行い、古い左のペースメーカーは取り出しました。メーカーに聞いたところ、新しい機種ではオフにしてあるペースメーカーが勝手にオンになることはないとのことでしたから、この現象はいつか消えてなくなります。ただ、このような例が他にあってはいけないと考え、患者さんの了解を得て私の失敗を公開することにしました。

失敗してしまったことに目をつむったり、隠したりしていると成長はありません。また、失敗を共有することで同じ失敗をする医師が少なくなればと思います。

失敗をした私が言うのも変ですが、誰にも失敗はあります。こんなことを考えていて思い出した言葉がタイトルの「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」です。

新型コロナの流行による経済の危機に、条件を付けて各世帯30万円を給付するという方針が閣議決定されたにもかかわらず、一律に10万円を給付すると方針が変わりました。これに対して一律10万円の支給を主張していた野党からも「朝令暮改」だと批判の声が上がっています。どちらが正しい方針かは分かりませんが、一度決めた方針だから決して変更はしないというよりも、よりよい方針があるのなら改めるという方が良いのではないかと思います。

野党の皆さんは「過ちて改めざる、是を過ちと謂う」という言葉を知らないのかもしれません。

2020年4月11日土曜日

鹿児島県や鹿児島県医師会の危機感の薄さにおののいています。

 2020年4月10日現在、鹿児島県で確認された新型コロナ PCR陽性者は4名です。東京都と比べればまだ僅かです。

一方、緊急事態宣言の出された東京都では、1日に確認される陽性者は連日、最多を更新し累計1528名です。Facebook仲間の先生方の投稿をみても、医療崩壊が現実に近づいていると感じます。

最上段の図は東京都医師会のWeb siteです。危機感の高まりを感じ、都民への行動の自粛を促すメッセージには現場を担う当事者としての悲壮感も感じます。医療者として現場に立ち、自らも感染のリスクを背負いながら使命を全うしようとする姿に医師の本来のあり方を感じます。

4月10日現在、陽性者の出ていない岩手県の県医師会Web siteが二つ目の図です。やはりトップに新型コロナに関する情報のリンクがあり、県としての最新の情報は4月10日付です。

同様に陽性者の出ていない鳥取県医師会のWeb siteでは、すぐに目に留まるようなバナーはないものの新着情報の欄に書かれた最新の情報は4月10日付です。

私の住む鹿児島県はどうでしょう。最下段の図が鹿児島県医師会のWeb siteです。メインは診療報酬改定です。右隅に小さくバナーは存在します。しかし、そこから辿り着く最新の情報は3月16日付です。もちろん、日本医師会や厚労省へのリンクはあるものの県医師会としての発信はほぼひと月前が最後です。

自分の住む鹿児島県の医師会の危機感の薄さに愕然とします。鹿児島県のWeb siteも同様です。 4月10日に出された鹿児島県新型コロナウィルス感染症に係る緊急対策第2弾の、最初の項目は終息後のにホテルや飲食店で使える商品券やクーポン券を発行するという終息後の経済対策です。

1名も陽性者が出ていない岩手県も鳥取県も危機感を持っているのに鹿児島県も鹿児島県医師会も何を寝ぼけているのだと思っています。最優先は県民を新型コロナから守ることだろうと思います。

大隅半島の遅れた循環器医療を何とかしなければと考え、2000年に鹿児島に来ましたが、この体たらくをみて、果たして20年前の私の選択は正しかったのかとさえ思ったりします。しかし、後悔しても始まりません。この鹿児島のコミュニティで嫌われても、ちゃんとしましょうよと発言し続けなければと自分を奮い立たせなければいけません。


2020年4月4日土曜日

対策はするけれども慌てない、普段のやりかたを守ると決めました。

 図は、2020年2月に左冠動脈前下行枝に薬剤溶出性ステントの植え込みを行った方です。本日、退院後2回目の受診です。階段を登っても、以前感じた胸痛は全くなくなったと喜んでおられました。次回の受診は、5週間後です。残薬の確認のためにあえて1週間分の残が出るように処方日数を調整しています。

今回のコロナ禍で、受診を恐れる方もおられます。このため普段はしない90日処方なども一般的になってきていると耳にします。私は、ビビりなので、ステント植込み後1ヶ月程度の方に90日処方をする勇気がありません。地域にコロナが蔓延し、とても来て頂く状況ではないとならない限り、今までのやりかたを守ろうと思っています。

鹿児島県では2020年4月4日時点で新型コロナ陽性の方は3名確認されています。英国から帰ってきた方が1名、関西から帰ってきた方が2名です。感染経路不明の方はおられません。

パンデミックになってから慌てても遅い、今のうちから対策するのだという気持ちもよく分かります。一方で慌てすぎて、3月後にパンデミックになっていたとすると、今から90日処方にしていたらステント植込み後半年以上も顔を見ていないという状況になってしまいます。また、こちらの危機感が上手く伝わるとよいのですが、医療者と患者さんが一緒に恐れおののくさまも、どうかなと思っています。パニックは伝染すると思っています。

陰では十分な対策をしてやせ我慢でも、どっしりと落ち着いているようにふるまいたいと思っています。余裕のあるうちは今までのルチーンを守ろうと決めました。

2020年3月21日土曜日

医療崩壊は需要増だけではなく供給減でも発生する

イタリアで医師不足に対処するために、医師資格試験を免除し、試験前の医学生を医師として現場に投入するというニュースを目にしました。2つの驚きでした。

一つはこの新たに投入される医学生の数が約1万人という点です。人口が日本の半分の約6000万人のイタリアの新卒医学生が1万人もいるのかという点です。日本では最近2つの医学部が新設され1学年の定員は増えましたがそれでも9300人程度です。日本の人口当たりの医学生の数は医師不足と言われるイタリアの半分ということになります。

もう一つの驚きは、医師資格試験に合格していないものを医師として現場に投入するという政府の決定そのものです。日本でも戦前・戦中の医師不足に対処するために医学専門学校(旧制医専)が作られました。今回の決定は、医師の質よりも数が必要だという戦時の発想です。そこまでイタリアは追い込まれているのかと改めて思いました。

図は前回のものを少しアウトブレークに合わせて修正しました。災害と異なり、需要の増加が短時間で終息しないこと、供給も経時的に低下することを荒っぽく表現しました。医療の需要を超えないようにピークを抑制させる施策としてイベントの自粛や外出の自粛をするのだと言われました。そのような図も盛んにTVなどで紹介されました。これは、供給が減少しないことが前提です。前回も書きましたが、中国でもイタリアでも日本でも医師や看護師などの感染は少なくありません。であれば、流行に伴って供給も減少してしまうことを意味します。死に至った医療者の補給には何年もかかります。アウトブレーク終息後も、亡くなった医療者が担っていた医療の供給は低下したままです。

医者は患者のために24時間働いて当然だという患者さんも決して少なくはありません。数日前から具合が悪かったが、仕事が忙しかったのでと言って、夜中や休日に受診される方もおられます。何日も前から具合が悪かったのなら、時間外や休日でなくても受診できたでしょなどとそんな方に話をすると、医者は患者の都合に合わせて働くのが当然だなどといわれます。医療者も生身の人間です。そこを理解して上手に社会のインフラである医療を利用しないと、医療の需給バランスが崩壊し、医療者だけではなく医療を利用する患者も困ってしまうのです。

医療者だけではありません。自衛隊も警察も消防も私たちの社会のために必要なインフラであり限られた資源に他なりません。税金で食っているのだから納税者である国民のために24時間働いて当然だという発想は蛸が自らの足を食うような発想です。今回の新型コロナ禍を通じて、このような公共のインフラの持つ意味をもう一度考え、上手に有効に、こうした公共サービスが維持される社会に成長できたなら、このコロナ禍も悪いだけではない経験になるのかと思っています。

2020年3月19日木曜日

医療者が頑張るだけではなく、医療者を守る視点が必要

2004年12月26日にスマトラ沖地震が発生しました。当時、徳洲会の専務理事をしていた私は救援隊長として、タイのタクアパやインドネシアのバンダアチェに行きました。循環器医ですから外傷の治療ができる訳でもなく現地に行って何ができるのかと不安に思ったものです。

タイのタクアパ病院は海岸から離れた立地であったために病院自体は被災しませんでしたが津波発生直後の殺到する患者増のために疲弊していました。一方、インドネシアのバンダアチェで支援に入ったザイノエル・アビディン病院は、病院そのものが被災し、機能が低下していました。また、医師や看護師も犠牲になっていました。医療の需要が急激に増加した急性期だけではなく、その後も長期にわたって病院機能が低下していたために需要に長く応えることができなかったのです。このため、急性期の災害支援だけではなくその後の復興の支援も行ったのです。災害支援だけではなく復興支援がなぜ必要かということを理解してもらうために15年前に作ったスライドが図です。

15年前に作ったこのスライドを見ていて、現状の新型コロナ禍でも同じように需要に対する供給不足はこのように表すことが可能だと思いました。急激な感染拡大で需要が増えるだけではなく、医療者が感染することで供給力も低下すると、医療の破綻は大規模で長期のものになりかねません。

武漢でも日本でも医療者の感染が報告されています。医療の需給を維持するために、医療者が頑張るだけではなく医療者を守る対策も必要だと改めて思います。バンダアチェでは、日本だけではなくオーストラリアやドイツなどが大規模な復興支援を行いました。しかし、今回の新型コロナ禍では他国からの支援は受けられないのですから。

2020年3月15日日曜日

きれいな言葉で装われた社会の本心を新型コロナが表出させる

一昨日2020.3.13には循環器学会で京都にいるはずでした。しかし新型コロナウィルスの騒動のために学会は延期され、急な空白ができました。ゆっくりすればよいのに生来の貧乏性ゆえでしょうか? 何かしなければと考え、日帰りで九州大学病院を訪問しました。残薬チェックの先達である先生に相談に伺ったのです。

感染のリスクを減らすために自動車での往復です。もちろん自動車内ではマスクなんかしません。しかし、九大病院に到着後にはマスクを付けました。感染が怖かったからではありません。マスクをせずに病院を訪ねると白い目で見られるのではないかと思ったからです。そんな風に考えた自分の気持ちを振り返って鹿屋ハートセンターに来られる方のことを考えると、感染予防というより付けてこないと居心地が悪いからという理由でつけてくる方も少なくないのではないかと思い始めました。実際、鼻を出していたりすき間だらけだったりで予防の役に立たないだろうという方も少なくありません。

マスクを着けていない人が暴行を受ける映像を見ると感染よりも人の目を恐れてマスクをつける人も少なくないと思います。日本国内でもマスクをせずに咳をした人が電車内で口論になったりというニュースも目にします。

ちょうど9年前に発生した東日本大震災時に盛んに「絆」という言葉が使われました。日本中、世界中の人が力を合わせて復興に取り組もうとか、「被災者」を非被災者が助けるのだという意味だったのかと思いますが、おなじ人間が他者と同じふるまいをしないとまずいのではないかと考えるのを不思議に思います。他者の視線を恐れ、他者と同化しないことを恐れる感情です。大地真央さんに「そこに『絆』はあるんか?」と聞いてもらいたい気持ちです。非被災者が余裕をもって被災者に「絆」というのは決して醜いとは思いません。しかし、自分も感染するリスクを負ったときに他者と同化しないとまずいと考える心情は「絆」とは対極にある気がします。他者と力を合わせようという気持ちと他者の目を恐れる気持ちの同居です。被災者も非被災者も、日本人も外国人も同じ人間だから助け合うのだというコミュニティで、生きていくためには同化しないと生きづらいのであればそのコミュニティの「絆」は何か嘘くさいと感じてしまいます。「絆」と言っていた、モラルや民度が高いといわれた日本の社会はトイレットペーパーを買い占めたり、マスクを分かち合うのではなく高額で転売するような社会でした。

「自由」「平等」「友愛」を憲法にも載せるフランスで「コロナは出ていけ」という落書きが中国人の経営する日本食レストランになされました。街を歩いていてもアジア人は「コロナめ」と罵声を浴びせられることもあると聞きます。「自由」「平等」「友愛」を憲法にも載せるフランスは、「自由」「平等」「友愛」の先進国ではありませんでした。「自由」「平等」「友愛」と言い続けなければ、憲法に書かなければ、「自由」「平等」「友愛」が保てない国だったと思います。おまえはRacist人種差別主義者だという表現は人を非難する言葉です。これもRacistを非難することで自分の心の中の人種差別を否定して安寧を図っているだけかもしれません。

新型コロナの騒動で、自分を含めて誰もがリスクを負う局面に立った時、心の奥に隠していた・気づかなかった感情が表に出てきました。新型コロナは感染していない人の心までも、あらわにするウィルスのようです。医学的な公衆衛生的な解決をいつか得て「人間」は「科学的」に成長すると思います。これだけではなく、この騒動を機にきれいにな言葉で繕ってきた他者の視線を恐れる心情や他者を蔑む感情などにも気がつき成長すればよいと思います。嘘できれいに装った「良い」社会よりも本音で築き上げられた社会がより良い社会であればと願わずにはおれません。

2020年3月3日火曜日

「新型コロナの検査はできんのか、しゃあないな、それなら、家帰って芋食うて屁ぇこいて寝よ」とはなりませんよね

youtubeより
私は今、鹿児島県鹿屋市に住み働いていますが、生まれも育ちも大阪です。大阪人というとボケたり突っ込んだりして会話をするんですよねと言われることもありますが、そんなことを大阪の学校で教える訳でもなくすべての大阪人がそんなことを良しとしているわけではありません。関東で働いている時には大阪人は下品だとか、粋じゃないなどと思う人が多くて多少のつらさもありました。すべての大阪人が下品なわけではありませんが、確かに大阪には広く普及している下品な言葉もあります。

「芋でも食うて、屁ぇこいて寝よ」などは代表的な大阪人の下品な言葉です。他の文化圏の人には意味が分からないと思います。意味は大阪出身の私にもよく分かりませんが…

ややこしいケンカになった時、難しいことを言われてよく分からない時などに、その面倒なことに終わりを告げるために「もうええわ、家帰って芋でも食うて屁ぇこいて寝よ」と使うのが一般的だと思います。

新型コロナのPCR検査で感度は〇%で、特異度は〇%、陽性的中率は〇%だから必ずしも検査をして陰性だからといって安心という訳でもないし、症状のない時に検査しても感染している人だって陽性にはならないのだから急いで検査を受けても仕方がないよと説明してどれほどの人が納得してくれるでしょう。まして心配だから検査をしてくれとネットに多くの情報があっても来られた方です。

本日の加藤厚労相の会見では新型コロナ検査の自己負担分は公費で補助するとのことでした。つまりただ、無料です。どれほどの人が必要もない検査を求めてこられるんでしょう。気が遠くなる思いです。

患者さんが「よう分からんけど、それやったら、家帰って屁ぇこいて寝よ」と言ってくれ、そんな会話で自宅待機が促されるのであれば言うことなしだと思います。しかし、今の時代にはそんなことは夢物語に違いありません。

2020年3月2日月曜日

このパニックに「こころの処方箋」でも読んでこころを落ちつかせましょう

もう何年も前からほぼ毎月、臨床心理学の勉強会に参加しています。鹿屋体育大学の臨床心理学の教授をされていた先生の主催です。長く参加しているからでしょうか、臨床心理士の資格を取るために受験をしたらどうかと勧められました。医師の資格で十分に仕事ができているので、あまり気が進まないのですが、いやとも言えずハイと返事をしてしまいました。

ここ数日、受験のための参考書や問題集がその先生から大量に送られてきます。問題集をみるとちんぷんかんぷんです。これは大変だと、読みやすい物から眺めてみるかと読み始めたのが図の河合隼雄先生の「こころの処方箋」です。文庫本が送られてきましたがKindle版もあります。

引き込まれました。新型コロナの騒動でこころが落ち着かなかったせいかもしれません。

2章の「ふたつよいことさてないものよ」では、何か悪いことが起きた時に、いつもいつも良いことばかりではないなと考えると不思議とこころが落ち着くのです。自分の人生を振り返っても良いと思った後につらいことがあったり、これは大変なピンチだと思ったことがあとの成功に繋がったりと、良いことばかりも悪いことばかりも続かなかったな等と思い出されるのです。「ふたつよいことさてないものよ」と呪文のように言っていると、こころが落ち着くのを感じます。

13章の「マジメも休み休み言え」もうんうんと言いながら読みました。新型コロナに関わる医師の投稿でも医師以外の投稿でも、エビデンスがどうだとか、和を乱すなだとかどうして喧嘩しているのと思うバトルがネット上にあふれています。正しい情報を得て行動することを否定はしませんが、益のない争いをするよりも「マジメも休み休み言え」位のスタンスが良いのではないかと思えるのです。

27章の「灯を消す方がよく見えることがある」は、灯りを失って方向を失った小舟で松明を燈しても見えなかった方向性が、灯を消すことで遠くの浜辺のぼんやりとした灯りを見つけて方向を知るという話です。あまりの情報過多に方向性を失っているのではないかと感じます。一度、灯りを消してたち止まって遠くを眺めることで見えてくる未来もあるように思えます。

正しい情報を一生懸命に勉強しても見えないウィルス相手です。こころの平静なしに立ち向かっても大きな失敗を冒しかねません。

21章の「ものごとは努力によって改善しない」です。医師も医師以外の方も陥っているパニックだからこそ「こころの処方箋」でも読んでこころを落ちつかせてはどうかと思います。

2020年3月1日日曜日

新型コロナのPCR検査が保険でカバーされ5000円だそうです。さらなる混乱が起きないことを願うばかりです。

一昨日2020年2月28日付の当ブログで、医師がこのくそ医者めと言われない社会になることを期待していると書きましたが、実はたいして期待していません。そんな風に医師を罵る人は少なくなることはあってもいなくなることはないと思っています。

やはり夜間の当番医をしていた頃ですが、夜中の3時頃に小学生の親だという方から今から頭のMRI検査をしてくれと電話がありました。どうしてMRI検査をしてほしいのかと尋ねると頭が痛いと言っている、ネットで調べたらヘルペス脳炎という怖い病気があって診断するのにはMRI検査が良いと分かったからだと言われます。子供の頭痛でも脳出血のこともあるので子供の頭痛で緊急性を要する病気がない訳ではありませんが、ごく稀です。ただこの方の場合意識はしっかりとしておりマヒもないとのことでしたのでそれならば夜が明けて小児科に受診し、ヘルペス脳炎が心配なのですが大丈夫でしょうかと話をして医師が必要と判断すればそれからMRI検査を受けたら良いとお話ししました。このお父さんは怒りました。娘が心配で今検査して欲しいのに何故できないのだと。もちろん開業医が夜間の急病の診察のためにボランティアでやっていた夜間当番ですからほぼすべての当番医にはMRIなんかありません。また、MRI検査が可能な病院でも、心配だから今からやってくれといってもMRI検査をいきなり午前3時にする病院もほぼありません。そんな話をしていると「MRIもできないのなら当番医なんかするな、くそ医者め」とやはり罵られました。

患者さんの行動は、夜間でも心配なら自分が思っている検査をどこでもしてくれるわけではないというような常識で決まっているわけではないのです。また、MRI検査をしてくれるはずだと期待していたものが期待通りに事が運ばないことで期待に対する裏切りに怒りを持たれます。この方の場合、ネットでヘルペス脳炎を見つけ、MRI検査が診断に有効であるという正しい知識を得る能力があったにも関わらずです。患者さんの行動を規定するものは医学的な常識やエビデンスではないのです。

新型コロナのPCR検査を保険でカバーし5000円の負担になるそうです。PCR検査を受けたいという方が、大勢 医療機関に行かれると思います。はいはいと引き受ける医療機関もあるでしょうし、症状もないのに検査しても無駄ですよという医療機関もあるでしょう。後者の場合、PCR検査をしてくれるはずだという期待を裏切るのですから、どんなに説明しても納得しない方から「このくそ医者め」と罵られると思います。

新型コロナに関するエビデンスは乏しい段階ですが、エビデンスを知り検査を実施する意義をよく理解している医師が罵られることになります。健康保険でカバーされて5000円で実施されると決まったPCR検査の普及が更に大きな混乱を起こさないことを願うばかりです。



2020年2月28日金曜日

新型コロナを機に「風邪も治せないくそ医者め」と罵られない社会になればと願っています

連日の新型コロナウィルス感染症の報道で、まだ感染者の出ていない鹿屋でも定期受診される方の多くがマスク姿で来院されます。この不安な状況が少しでも早く終息するように願っていますが、こんな状況でも悪いことばかりではないなと思っています。図は、友人がFacebookにアップしてくれた新型コロナウィルスが心配になったらどう行動すべきかというものです。風邪症状があってもすぐには受診せずに様子を見て症状が持続する人や普通の風邪とは異なるだるさや息苦しさがあれば相談センターに相談してくださいというものです。

この対応は新型コロナに限らず、通常の風邪でもインフルエンザでも同じだなと思います。「風邪薬を飲んで早く治しましょう」というCMや「風邪でもどうしても休めない時にのみましょう」という感冒薬のCMをいつも違和感をもってみていました。風邪の症状をやわらげる薬はあっても治す薬なんかないのに、早く治そうと思ってきましたという風邪症状の方は少なくありません。医師に処方される薬を内服しても早く治るわけではないよと患者さんに説明しても、たいていの場合は頼りない医者だと思われたり気が利かない医者だと思われたりするだけです。

鹿屋に夜間急病当番があった頃、「明日はどうしても休めないからすぐに治る注射を打ってくれ」という方が来られました。そんな薬はありませんよとお話しすると「風邪も治せないくそ医者め」と罵られました。今回の騒動を機に、すべての医師は風邪も治せないくそ医者だという理解が深まるのではないかと期待しています。

インフルエンザの検査でも戸惑う場面は少なくありません。陰性であった方が、では仕事に行っても良いですよねと言われるからです。保育園に勤務されている方や介護施設の職員からも同じように言われたことがあります。通常の風邪だってお子さんや施設の入所者にうつるし、検査が陰性でもインフルエンザという場合があるので勤務は控えた方が良いと思うよとお話ししてもインフルエンザ陽性じゃなければ休ませてくれないと言われるのです。風邪くらいで休むなという文化が広くいきわたっているのだと感じます。この文化が改まらないからこそ新型コロナの検査をしてもらえないなどという不安が広まるのだろうと感じます。

学校の対応にも困る場面が少なくありません。インフルエンザ陽性だと欠席扱いにならないものが陰性だと欠席になるのでインフルエンザという診断書を書いてくれ、登校しても良いという診断書を書いてくれ等という学校からのリクエストも診療の現場を混乱させます。最近はこうした診断書を求めない地域や学校も増えてきましたが、鹿屋ではこうした学校からのリクエストはまだ残っています。

今回の騒動を機に、風邪で急いで受診したりせずに様子をみていよいよ大変な時に受診するという風に変化すればよいと思っています。また、社会や学校が風邪で休む人に寛容になればと願います。

隗より始めよです。当院に通常受診される方に図を印刷して配布するようにしました。風邪だから早く受診しようとか、新型コロナかもしれないからすぐに受診しようとは思わずに様子をみていて良いのだよということ、普通じゃないと思えば電話で相談すればよいよということがうまく伝わればと思っています。

2020年2月4日火曜日

残薬チェックは善意でするのではなく療養担当規則に書かれた保険医の義務です

 2019年7月から始めた徹底した残薬チェックですが、その効果もあり鹿屋ハートセンターに通院されている方の残薬は1ヶ月に1-2回のみ忘れるという程度に劇的に改善しました。こんなに徹底して取り組んでいるのはうちくらいじゃないかと思っていました。

図は、保険医が守らなければならない規則。療養担当規則です。いわゆる療担規則です。医師になって40年以上になるのに下段の20条のロ 診察を行う場合は、患者の服薬状況及び薬剤服用歴を確認しなければならないという条項を知りませんでした。服薬状況を確認するということはのみ残しがないか確認するということです。私が取り組んできたことは特別ではなく保険医としての義務であったのです。多くの先生に、先生のところの患者さんの残薬はどれほどですかと聞いてもその答えをもちあわせている先生と出会ったことはありません。私だけではなくほとんどの先生が療担規則に記載されている義務を果たしていないと思います。

よく袋一杯、箱一杯に飲み残しの薬を持っている患者さんがいるという話を聞きます。医師がきちんと処方した薬を内服しないのは患者の自己責任だという考えも分からない訳ではないですが、服薬状況を確認するのが保険医の義務であれば患者の自己責任で処方した医師には責任はないとは言えないと思います。

多くの保険医の先生が療養担当規則に記載された義務を果たし、その結果として残薬が減少しより良い治療効果が上がることを願います。

2020年1月30日木曜日

残薬を減らすための鹿屋ハートセンターの工夫 たいして手間はかからずに残薬は大幅に減少しました

 2019年7月から、飲み残しの薬のチェックを始めました。始めて半年が経過しました。当院に通院されている方のほぼすべてが残薬を持ってこられるようになりました。当初、15%超の残薬があったものが、今では数%にまで減少しています。こうした成果を、あちこちで講演させていただくようになりました。よく質問されるのはどのように患者さんを指導しているのですかということです。

答は全く指導していないとなります。

当初、次回受診日までの処方を行い、残りがあれば持ってきてくださいと言っていました。

もちろん、すべて内服された方は持ってくる薬がない訳ですから何も持ってこられません。一方、残薬のある方も全部内服したから持ってこなかったと言われる率が低くありませんでした。ですから全部内服したという言葉を信じて残薬率を出すと1%程度でした。
100日処方して1日しか飲み忘れないなんてにわかには信じられません。(厚労省のデータでは1%ですが…)

なにか工夫がないかを考えて始めたやり方は、次回受診日に1週間分が残るように処方するというやり方でした。当初は、毎回1週間分多く処方して金儲けのつもりかと怒り出す方もいらっしゃいましたが、次回受診日の処方は余った1週間に加えて次回受診日までの処方ですから、多く処方するのは最初の1回だけです。今では皆さんが納得してくれるようになりました。

このやり方だと、すべての方に持ってくる残薬がある訳ですから、全部内服したから残りはないよという言い訳はできません。このやり方を始めて1回目の残薬率は14%でしたが、2回目、3回目とドンドン残薬は減少し、数%の残薬に減少しました。診察室で私自身が残薬を確認するので大変ではないかと聞かれることもあります。上の図は残薬のなかった方です。1X処方の薬剤が7個ずつ、3X処方の薬が21個、ひと目で分かるので飲み残しのない方のチェックに要する時間は10秒もありません。こうした飲み残しのなかった方にはちゃんとされてて感心しましたなどと言っています。

下段の図の方ですが、1Xの薬が3種類、7個ずつ残っています。2Xの処方は14個残る筈なのに、やはり7個しか持ってこられませんでした。14個ある筈なのにおかしいね等と話していると、叱られないように1週間分だけ持ってこようとして間違えたと言われます。叱られないために真実を隠そうとされる患者さんは少なくありません。嘘をついて医者をだましても誰も得はしませんよねとだけ話しています。

ワーファリンの時代には、PT-INRの値をみながらの会話がありました。飲み忘れはなかったか、納豆を食べなかったか、他の薬を内服しなかったか等です。NOACの時代になって処方は格段に容易になりました。しかし、患者さんとコミュニケーションする材料がなくなって私は物足りなさを感じていました。しかし、今は残薬を挟んで会話が成立し、その会話を通じて患者さんが自らきちんと内服しなければならないと考えたり、きちんとするための工夫を考えてくれたりするようになってきたのだと思っています。

上から指導をしても、患者さん自身が受け入れてくれなくては改善は期待できません。ですから指導なんてしていないのです。患者さんと私との間に話し合う材料さえあれば気づいてくれると信じていますし、実際に残薬は驚くほど減少しています。