勉強をする中でDabigatran内服患者で発生した出血性合併症に対して、米国で4000人ほどの方が訴訟を準備していたこと。メーカーが法廷で争うという選択をせず約650億円で和解する途を選んだことを知りました(Fig. 1)。私もハートセンターで数は多くありませんがDabigatranを処方しています。しかし、米国で出血性合併症を発症した患者さんと和解したなどという話はメーカーから聞いていませんでした。そういえばもうこのメーカーのMRさんは半年以上も当院に来られていません。
更に今年7月のBritish Medical Journalにはこのメーカーが重要なデータを隠蔽して認可を得たという批判記事が掲載されました(fig.2)。このBMJの批判に対するメーカーの反論もメーカーからプレスリリースが出ていますが少なくとも私のところにはメーカーから連絡はありません。
Fig.3はこのメーカーに所属する研究者が書いた論文の中の表です。
The Effect of Dabigatran Plasma Concentrations and Patient Characteristics on the Frequency of Ischemic Stroke and Major Bleeding in Atrial Fibrillation Patients. J Am Coll Cardiol. 2014;63(4):321-328.
この表を見ると1日220㎎を内服している患者でのDabigatran濃度は内服直前の測定でも1.15-608と大きくばらつくことが分かります。また1日300㎎では1.04-809とばらつきます。そしてこのDabigatran濃度と出血の頻度には関係があるというのです。
この結果を見て、私がかつてこのブログで1日150㎎の投与でも十分にaPTTが延長する患者さんがおりこうした患者さんには220mgを処方すべきではないと思うと書いたことが間違っていなかったと確信しました。2013年6月14日付当ブログ{プラザキサ75㎎ 1日2cap 2Xの処方で得られた・・・」
認可に向けた試験では1日300mgと220㎎の処方で良い結果が出たのだから1日150㎎の処方は不適切だとメーカーの講演会で演者の先生方が強調されます。平均体重80㎏の患者群で示された結果だから体重50㎏の患者でも220㎎使用するのがエビデンスに沿った治療と言えるのでしょうか?何か乱暴な論理のように思えます。日本でDabigatranの処方を受けている患者の約10%はこの1日150㎎の処方を受けていると聞いたことがあります。ルールを守らない不適切な処方をすべきではないと演者の先生方は強調されますが、私はこの10%の先生方はルールを守っていないけれども患者を守るために真剣に考えている先生方だと思います。
Dabigatranだけの問題ではないと思います。腎機能や年齢・体重を無視してTrialの用量通りに投薬すればよいのだという論理は破綻したように思えます。Trialのデータは承知しながらも、種々の状況を鑑みて治療したいと思います。たとえ不適切と言われても考えるのが医師の仕事ですから・・・
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