昨年の国勢調査の結果では、鹿屋市の人口は5年前とほぼ同じでした。しかし、大隅半島内の鹿屋市以外の郡部では5-10%の人口減です。人が減り続ける中で、人を相手の仕事を維持することには恐怖があります。医療機関に来られる患者さんが減少し、医療を支えるスタッフが減少する中で機能を維持できるかという不安です。こうした現象は大隅半島内に限らず人口増を続ける大都市以外の日本全国の地方で起きている現象です。大都市だけが生き残れるかという点も疑問です。数十年後には日本全国で数千万人も人口が減少すると予想されています。日本が初めて迎えた人口減少時代に過去のビジネスモデルは成立しません。誰も答を知らない中での将来設計は難しいテーマです。
人を相手にしない仕事があるでしょうか。医療のみならず、医療と同じように直接人に接する美容も理容も、人にモノを販売するスーパー等の小売りも、自動車や電化製品も、全ての職種で購入する人が存在しないと維持できません。人が減少する社会を知らない訳ですから、過去に感じたことのない恐怖です。
そんなことを考えながら今日は一人で「家食」です。鹿屋を中心とする大隅半島は食材の宝庫です。有名な黒毛和牛や六白黒豚の大きな生産地ですし、ウナギの生産も国内有数です。インゲンやピーマン、ゴボウ、里芋等も生産量が多いですし、カンパチの養殖量も国内随一です。食材だけではありません。有名な「森伊蔵」も「魔王」も大隅半島に蔵元があります。鹿屋市内にも「大海」や「小鹿」といった大きな焼酎メーカーが存在します。天然水で有名な「財宝温泉」も大隅です。水も焼酎も野菜も海産物もお肉も豊かなこんな土地に住むのは初めてです。
とはいえ、2000年に鹿屋に転勤してきた頃、どこで黒豚を求めて良いのか分かりませんでした。多くの食材は大きな消費地である都市部に安く提供され地元で求めるのは困難だったのです。しかし、この10年で様子は変わってきました。黒豚を扱う商店も増え、私の大阪の実家に送ることも容易になりました。イセエビやサザエ、アワビなどもです。しかし、こうした食材の価値を高める人の手が入った料理を提供する環境は、大隅ではまだ不十分です。もったいない話です。
本日は、最近鹿屋にオープンした「豚に真珠館」というお店で買った、ソーセージとハム、地元のキャベツでワインを少し飲もうという魂胆です。「豚に真珠館」は福留さんという方が始められたお店です。お兄さんが生産したお肉を弟さんが加工するのだそうです、弟さんはドイツでマイスターの資格を取って帰ってこられました。都会で店を開けばもっと大きな商売になるかもしれないのに地元で生産し、地元でマイスターの腕で加工します。その意気やよしです。田舎で生産し、田舎で加工し、そこで頂くといったスタイルはイタリアのスローフード運動のようで心を揺さぶられます。こうした動きは10年前には鹿屋には少なかったように思いますが、最近は30歳代の若いオーナーを中心に地元の食を盛り上げようとする動きが高まってきました。かつて工場を誘致しようとする動きもあったようですが、交通の不便な大隅では難しい話です。その土地にあった発展形があるのだろうと思います。地元の食材を生かして「食の王国」を作り上げようとする若いオーナーたちを見ていると、私が感じていた近い将来の人口減少時代に対する不安は杞憂かもしれません。「食」も万全、医療も万全という町を目指して、将来を嘆くことなく頑張らなければなりません。
さあ、お風呂に入って、地元の食材を堪能しましょう。
写真は鹿屋のK-work netの社長さんのブログから無断で拝借しました。鹿屋ハートセンターの建築にも関わって頂いた社長さんです。無断の掲載も許してくれると信じています。
読んでいて、嬉しくなる記事です。
返信削除郷里に根付いていく若者が増えるといいですね。
物事の見方をどの様に受け止めるか。。個々の価値観に左右されますけど。誇りに思える故郷はいつ迄も活気づいていて欲しいと思いますね。