2013年12月24日火曜日

医師である診療報酬審査委員のみが、現場の医師を苦しめます。

カルベジロールという薬剤があります。循環器医が心不全患者によく使用する薬剤です。ただ先発品である「アーチスト」には心不全に適応があると記載されていますが、全く同成分である後発品(ジェネリック)にはこの適応はありません。適応がないだけではなく、心不全には禁忌とされている製品も存在します。ジェネリックの使用を促進する厚生労働省が、先発品には適応があると言い、後発品は禁忌であるという矛盾した指導をしているのです。

 もちろんこんな仕組みでは混乱が起きます。医師が少しでも患者さんの経済的な負担を減らしてあげようと考え、国の医療費をさげる努力に協力しようと考え、心不全患者さんにこのジェネリックを使用すると原則査定されます。おかしな話です。

こんなおかしな制度の狭間で経済的な損失を被る医師をかばうために診療報酬の審査委員の中には目をつむる方もおられます。患者さんに対しても、国家に対しても善意で行った行為を、杓子定規に査定しなくても良いだろうとの考えです。こうした考え方は善きサマリア人の法(Good Samaritan law)の考えに似ています。善きサマリア人の法は「災難に遭ったり急病になったりした人など(窮地の人)を救うために無償で善意の行動をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができることをしたのなら、たとえ失敗してもその結果につき責任を問われない」というものです。こうした考え方は医師であれば得心の行くものでこの考え方をする医師とは働く環境や国が違っても仲間意識を共有できます。

 とはいえ「悪法も法」ですから、審査委員の先生も無理をせずにルールだから我慢してねというスタンスでも不満はありません。このようにある県では杓子定規にルールを適応し、ある県では融通があるというような各県ごとの審査の違いは現実に存在します。そのように各県による審査の違いは存在しても、違いがあるから各県の審査は独自性を持っているのだという訳ではありません。全国共通のルールの下に保険診療は成り立っているはずです。

 先日来のIABPが査定された件で納得できる説明をお願いしていますが、鹿児島県国保連合会は面談して説明してくれません。そこで鹿児島県福祉部保険医療福祉課国保指導室に説明してくれなくて困っていると電話を入れました。指導室の方は裁判などの手間をかけずに説明してくれれば良いと思うが、国保連合会を指導する立場にないと言われました。そして国の出先機関である九州厚生局に相談すればどうかと教えてくれました。早速、九州厚生局に相談の電話を入れました。厚生局の方は国保連合会は説明する義務を負っていると言ってくれました。ただ指示する立場ではないので県の指導室が指導すべきだと言われます。話が前に進みません。

 そうこうしているうちに国保連合会診療報酬審査委員会からの文書が本日郵送されてきました。図です。査定は医学的な問題ではない、冠動脈造影と一連の医療行為だから保険診療として認められないのだ、他県で認められても各県に独自性があるのだから理解しろ、また面談は行わないという方針を理解しろとのことです。

 相変わらずです。私が説明を求めているのは冠動脈造影に引き続き実施したIABPは一連の医療行為だから保険診療として認めないというのであれば根拠となる規則や通知・通達があるのかを示してほしいということです。国保連合会の事務方は明確にそのようなルールはないと言っているのです。ルールが存在するのであれば従います。ルールがないのにもかかわらず、審査委員が勝手に査定しているように思えるので不服を申し立てているのです。

国保連合会の事務方も、県の国保指導室も、九州厚生局の方も皆さんが私が説明を求める理由を理解してくれているのに、医師である審査委員会のみが理解してくれません。このような医師が医師会から県に推薦され、県知事から委嘱され審査委員となっているのが鹿児島県です。とても医師同士の仲間意識を持てません。
x

0 件のコメント:

コメントを投稿