Fig. 1 Braumwald UAP Class |
クレアチニンが1.5以上あったためにCTでF/Uせずに造影剤量を少なくできるCAGで評価しました。図に示す通り#7も#1も全く再狭窄なく良い経過でした。
PCI前のCAG所見はひどく危険な状態でしたから、このケースについてはPCIで予後を改善できたと胸を張って言えると思っています。安定した労作性狭心症に対するPCIは内科的治療と比べて予後を改善しないとよく言われます。PCIをする医師は予後も改善しないのに無駄なPCIばかりしていると批判されます。この件に関しては何回かこのブログにも書いてきました。
このケースは全く無症状でしたが、心電図で小さなQ波がII、III、AVFに認められるということで近医から紹介されたケースです。紹介で来られた方に心電図所見のみから心配ないと返事するわけにもいかずCTで評価したところLADとRCAの病変を発見できPCIとなりました。この場合、このケースは安定した労作性狭心症でもなく不安定狭心症でもありません。無症候性心筋虚血というほかありません。安定した労作性狭心症と不安定狭心症・無症候性心筋虚血を区別するものは症候のみです。
Fig. 1に有名なBraunwaldの不安定狭心症の分類を再掲しました。不安定狭心症は安静時の発作があればClass IIかIIIになり、新規発症か悪化型の労作性狭心症であればClass Iになります。安定した労作性狭心症は安静時にも胸痛もないし、悪化の兆候がない2か月以上前からの労作時だけの狭心症ということになります。
当院でPCIを受けられた方の症候を振り返ると、このケースは無症候ですが、症候性の方のほとんどは、最近調子が悪くなってきたから受診したという方ばかりです。当然だと思います。調子も悪くないのに受診する方はおられないからです。
安定した労作性狭心症に対するPCIは予後も改善しないのに無駄なPCIが数多く実施されていると、循環器以外の医師も一部の循環器の医師も言います。では、安定した労作性狭心症の方はどれほど存在するのでしょう。もちろんこうした方はいらっしゃいますが、PCIの現場のほとんどは症候の悪化に伴って治療を受けているというのがreal worldの姿ではないかと思っています。今回のケースのように無症候であるけれども危険な病変を持っている方もおられます。症候のみで分類されるあやふやな定義で導き出された偏った結論 「予後も改善しないPCI」を覆す確かな検討が必要だと思っています。
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