2010年12月9日木曜日

冠動脈バイパス後患者の64列MDCTによる評価

Fig. 1
  冠動脈CTで評価するのが非常に適していると考えられるのが冠動脈バイパス(CABG)後の方です。この方は2007年に左冠動脈主幹部の狭窄が原因の不安定狭心症で来院され、大隅鹿屋病院の心臓外科でCABGをしていただいた方です。術後は安定し胸部症状はありません。心電図が右脚ブロックのために、負荷心電図での虚血の評価は無力です。術後3年半が経過し、CTで評価しました。Fig. 1で示すように繋いだ左内胸動脈-左前下行枝(LITA-LAD)、大伏在静脈-高位側壁枝(Ao-SVG-HL)がきれいに描出されます。若干のHerical特有のartifactはありますが診断には問題ありません。
Fig. 2 LITA-LAD
Fig. 2ではLITAの内膜に問題ないことも一目瞭然です。ここには示しませんがSVGの内膜にも問題を認めませんでした。将来、このSVGが変性した時に、そこに対するインターベンションの安全性をCT画像は保証してくれるような気がします。バイパスグラフトは心拍動の影響を受けにくいためCTで細かな評価が可能なのです。
 CABG後の評価の目的はグラフトの開存性とnative coronaryの評価です。本例でも閉塞した左冠動脈主幹部を含めてnative coronary の評価も十分です。これらをすべてカテで見ようと思えば造影剤量は100ml程度は必要になります。今回の造影で使用した造影剤は55mlでした。CABG後の評価の場合CTによる評価のほうが患者には優しいといえます。
 造影剤の量やカテに関わる手間だけではありません。安全性の問題があります。かつて内胸動脈の造影で内胸動脈に解離を作りクリティカルになったケースを聞いたことがあります。しかしCTではそのような問題は起こしません。CABG後の評価にはCTがカテに比べて圧倒的にベターと言えると思います。
 今後、余程の理由がなければCABG後のカテはしないつもりです。



Fig. 3 native LCA

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