2012年8月29日水曜日

本日は朝1番からAMIでした。OCTで評価し、意思決定しました。

Fig. 1 ECG on admission
Fig. 2 Before PCI
Fig. 3 OCT imaging after recanalization with balloon
Fig. 4 OCT after stenting
60歳代半ばの男性、今朝の6時に胸痛で発症です。持続する胸痛のために救急車を呼ばれ、6時39分に救急隊からの受け入れ要請です。 きっと心筋梗塞に違いないと考え、待機の技師さんに来てもらうように連絡しました。そんなに救急の多くない当院では技師さんの当直はしていないからです。病棟の看護師さんは普段カテ室に入っている看護師ですので呼び出す必要はありません。鹿屋市以外にカテ室のない大隅半島では、受け入れ要請を受諾しても病院到着は7時9分です。約30分の搬送時間です。Fig. 1は来院時の心電図です。全ての胸部誘導でST上昇を認めます。救急隊員のモニター上はST変化を認めませんとの報告を受けましたが、見せてもらったモニター心電図でも明らかにST上昇を認めます。心電図が読めなくても正しい医療機関に搬送してくれたのですから良しとしましょう。元々は何の病気もない方ですから、元々の右脚ブロックかもしれませんが、前壁梗塞の発症で生じた右脚ブロックであれば予後不良の徴候です。

     緊急冠動脈造影でFig. 2のように左冠動脈前下行枝の近位部に完全閉塞を認めます。血栓吸引でミミズのように長い赤色血栓を認めました。発症後間もないのに少し意外な感じです。この時点で再開通と考えると来院から25分で再開通、発症から1時間半で再開通です。

Fig. 5 Just after 3.0mm stening
前拡張後にOCTを実施しました(fig. 3。) 急性心筋梗塞の病態を見るのにきっと有用だろうと考えてのことです。TCFA(Thin-cap Fibroatheroma)に加えてNecrotic coreの所見でしょうか。この観察に引き続き3㎜のステント植込みを実施しました。ステント植込み後のOCT像はFig. 4です。ステントは良好に拡張しているもののステント内にprotrusionした血栓を認めました。この時点で造影上は壁が不整かなという程度でしたが、しばらく時間がたつとFig. 5に示すようにステント内に透亮像が見えてきました。このため3.5㎜バルーンで後拡張を行っています(Fig. 6)。経過を見ないでOCTを見た直後に後拡張をしても良かったかなとも思います。まだ慣れないOCT像ですのでなかなかPCIのdecision makingに所見を活かすことができませんが、こうした所見に慣れればDecision makingに使えるようになるだろうと実感しました。このPCIからこのブログを書いている現在までに約12時間が経過しましたが、安定しているので後拡張の効果が出ているのでしょう。

PCI後のSwan-Ganzカテでの評価ではPCWP=31mmHg、CI: 2.68L/min/m2ですからForrester IIです。カテ後の尿の流出も良好ですから明日にはForrester Iになってくれると思っています。

F1g. 6 After post dilatation with 3.5mm balloon
急性心筋梗塞の方が来院された時に最優先は再灌流をなるべく早くに実現することです。このために右心カテはPCI後にするようにしています。一方、再灌流後の冠動脈の仕上げは一刻を争うという訳ではないのでOCTなどによる評価をステント植込み前に実施することは許されると思っています。こうした病態に迫る努力が、何も考えずに実施するPCIだけよりも長期の管理に向けた方針を形作るような気がしています。

この方の総コレステロールは148mg/dl、LDLは91mg/dlです。喫煙が20本ですのでこれが発症の要因だったのでしょうか。




3 件のコメント:

  1. お疲れ様です。最小構成人数の中で、このような重症心筋梗塞と戦う先生の姿に勇気づけられるとともに、恵まれた自分の環境での甘えた考え方が恥ずかしくなります。
    精進しなくてはいけません。先生の病院では医師の募集などはされているのですか?

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  2. 匿名様、コメントをありがとうございました。少人数の施設では、苦労もないわけではありませんが良い面もあります。鹿大から研修に来ている先生は週2回のネーベンで年に100例程度のPCI術者をされています。
    当施設でそれなりの経験を積み、CVITの認定医や専門医として巣立って行く先生に出会いたいものだと思っています。
    ご興味がありましたらいつでも見学にいらしてください。

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