2012年8月1日水曜日

モノづくりに賭けるプライド 壊れた聴診器を見て考える

Fig. 1 broken stethoscope, fractured flat spring 
聴診器が壊れたので、腹が立ってFacebookに投稿しましたが、冷静になってきたので、モノづくりについて考えました。

数年前に任天堂DSを息子が乱暴に扱って壊した事がありました。あまりゲームに夢中になって欲しくなかった私は、壊した自己責任だから諦めなさいと言っていました。しかし、息子は諦めきれず、インターネットで任天堂のwebsiteを探し当て、サービスに連絡して、修理を依頼しました。依頼したのに放置するわけにもいかず、壊れたDSを京都に送ったところしばらくして、新品のDSが送り返されてきました。無償です。古いDSに貼ってあったシールも同じように貼ってです。ゲームに夢中になるのは今でも嫌ですが、それ以来、私は任天堂という会社のファンです。今は、無償で交換するようなことはしていないそうですが、子供たちが遊ぶゲーム機のどこが壊れやすいか、壊れた製品を見て次の製品開発に活かすコンセプトだったそうです。

こうした、壊れた製品を取りかえるサービスをしているのは日本のメーカーだけではありません。我が家の掃除機はダイソンですが、これは兄に勧められたからです。兄の家で使っていたダイソンの掃除機は使い始めてから何年も経って故障しました。修理に出したところやはり新品になって帰ってきたのです。それ以来、兄はダイソンから浮気をしませんし、私たちにも勧めています。

壊れた製品を次の製品開発に活かす、そしてそうした情報を提供してくれたユーザーを大切にするメーカーを誰が悪く思うでしょうか?

心筋梗塞の発症後、急に呼吸苦を訴えて状態が悪くなった方に聴診器をあてたら、それまでなかった収縮期雑音が聞こえた。これだけで、心室中隔の穿孔や乳頭筋の断裂が診断可能です。聴診器による診断で危機を把握し、救命処置に繋がることもあります。このため、聴診器が急に使えなくなった時に備えてすぐに使える聴診器を私はいつも少なくとも2本用意しています。

医師になって33年、聴診器は耐久性の高いものと思っていましたが、写真に示す板バネ部分がよく折れ、既に何十本も買い替えています。命にかかわる現場で使用するものなのにあまりにもよく壊れます。日本の代理店にクレームを言ったこともありますが、改善の方向を教えてくれたことはありません。

命に関わらないゲーム機や掃除機に負けないモノづくりの気概を聴診器メーカーにも示してもらいたいものです。

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