2011年1月17日月曜日

終戦直後の黒塗り教科書と現代のPMDAによる黒塗り文書 stent fractureに関わる行政の闇


Fig. 1 Japanese textbook just after the World War II

   Fig. 1は、第二次世界大戦 終戦直後の日本の小学校の教科書です。「ボクハ センシャ兵 ダヨ」といった戦中の教科書をそのまま学校で使っていたために軍国主義思想を排除する目的で左のように黒塗りの教科書が登場しました。黒塗りするのは民主教育から軍国主義教育を排除する目的ですから、黒塗りも理解可能です。とはいえ、こんなものまで黒塗りするのかというような行き過ぎがあったとも聞いていますが…
  

Fig. 2 DES Approval Document of PMDA

  Fig. 2は、薬剤溶出性ステントの認可にあたって、PMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)がそのホームページで公開している承認文書です。各ステントメーカーは、承認を求めるにあたってPMDAに提出した資料を公開すべきではないかと2010年12月23日付のブログで書きました。この中で私はそのような資料の存在を知らないと記載しましたが、さすがにPMDAです。承認の過程を記載した文書を公開していました。たとえばXience Vであればこのリンク先で公開されています。総ページ数1000ページを超える文書です。


 PMDAのweb siteではPMDAの理念として1番に「国民の命と健康を守るという絶対的な使命感に基づき、医療の進歩を目指して、判断の遅滞なく、高い透明性の下で業務を遂行します」と記載されています。流石です。資料が公開されていることも知らずに行政の責任などとこのブログで書いた不明を恥じるべきと思いました。しかし、驚きました。stent fractureに関わるページをFig. 2に載せましたが、Xience Vは、同等のデザインであるVision stentで行っているので加速疲労試験は不要であると記載されています。BMSではほとんど問題にならなかったstent fractureがDESになって問題になっているにもかかわらずです。また、overlapでのstent fractureが問題になっているために実施されたと思われる「重複留置における半径方向負荷による加速疲労試験」の項では、試験方法が戦後の教科書のように黒塗りされているのです。メーカーは試験方法や試験結果を黒塗りしてPMDAに提出するはずがありませんから、公開にあたって黒塗りする判断をしたのはPMDAです。PMDAは何から何を守りたくて黒塗りにしたのでしょうか。


  何かの実験をして、仮説を実証しようとする時、最も大切なことはMaterials and Methodsです。ここがいい加減な論文はアクセプトもされないでしょうし、仮にアクセプトされたにしても大きな批判にさらされるだけではなく、誰にも信用されないのは常識と言えます。そうそうたる研究者が専門委員に名を連ねるPMDAなのに、なぜこのようなことが起きているのか理解できません。stent fractureに関わる闇は、PMDAによって作られているようにさえ思えます。


  Autopsyで29%、CTによる評価で15%程度のstent fractureが短時間の内に現場で発生しています。試験方法を黒塗りした承認文書では10年に相当する加速試験で99%に破損が認められなかったとされます。では、その試験方法に問題があると考えるのは私の間違いなのでしょうか。問題になったVLST(超遅発性ステント血栓症)よりもはるかに高頻度で発生しているstent fractureを解決するために、黒塗りといった手法は早急に改められなければなりません。

0 件のコメント:

コメントを投稿