Fig. 1 before PCI |
Fig. 2 After LAD stenting |
前下行枝にステント植込みを行い、対角枝にワイヤーを入れなおそうとしてもなかなかクロスできず、そうこうしているうちにFig. 2に示すように左冠動脈主幹部に解離が発生しました。対角枝を拾うよりも主幹部の閉塞を起こさないことが優先です。対角枝を諦めて主幹部にステントを置きました(fig. 3)。対角枝は閉塞したままです。
Fig. 4はその2か月後の造影です。対角枝は再開通しています。また心エコーで評価しても側壁はダメージを受けていませんでした。
Fig. 3 After LMT stenting |
この方が亡くなり報告されたとばかり思っていましたが、数日前に元気に再診に来られました。報告された方はこの方ではなかったのです。
どうせ後から再開通する対角枝を拾いに行ったばかりに主幹部にステント植込みをする羽目になり同部の血栓閉塞の元を作ったとか、DAPTを中止したのがまずかったのかなどと考えてきましたが、元気な姿を見てホッとしました。
Fig. 4 two months after stenting |
相反するどちらの判断をしても意図とは異なる結果が発生する可能性はゼロではなく、どちらの選択を行ってもリスクが付きまといます。より安全である可能性が高い選択しかできない臨床の現場には心配だらけです。
こうした心配から逃れる唯一の途は医師を辞めることだけです。ただこの途は、病に苦しむ患者さんを放り出して逃げる途です。
現場にいる限り付きまとう心配は解消しませんが、常に最も妥当な選択をするとともに、その選択でも起こりうる意図しない問題に対処する強い心を持ち続けなければなりません。現場にいる限り心を奮い立たせましょう。
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