2010年12月10日金曜日

Cypher stent植込み3年半後に認められた冠動脈瘤形成 CT所見とIVUS所見

Fig. 1 Coronary CT
この方は安定狭心症の方で3年半前にLADにCypher stent植込みをIVUS guide下に行った方です。Fig. 1に示すようにstent内に再狭窄を認めません。ただ他枝に 新規病変を認めたために本日CAGを行いました。
3年前に再狭窄を認めなかった(Fig. 2)LADに動脈瘤様の拡張を認めます(Fig. 3)。振り返ってCT画像を見ると、確かにstent外に造影される部分を認めます。振り返って見るまで気付きませんでした。今回のCAGの対比でstent植込み後の冠動脈瘤形成のCT画像を理解できました。
他枝のPCIの終了後に、動脈瘤をIVUSで観察しました。Fig. 4に示すstent distal edge部は拡張した時のまま3mmでappositionも良好です。一方、stent bodyではstentは内膜から完全に浮いておりlate incomplete appositionの所見です。
Fig. 2, 6months after Cypher implantation
 こうしたCypher植込み後の冠動脈瘤形成は1.25%の頻度で発生すると報告されています。(Fernando Alfonso et al, Coronary Aneurysms After Drug-Eluting Stent Implantation.Clinical, Angiographic, and Intravascular Ultrasound Findings. J Am Coll Cardiol, 2009; 53:2053-2060) また、DES植込み後の冠動脈瘤形成は急性冠症候群に対する植込み後に多いこと、瘤形成はその後のstent血栓症の危険因子であることが報告されています。
 今後、この方の管理をどうしてゆけばよいのでしょうか。stent植込み後3年以上が経過していますが今後も継続して2剤の抗血小板剤の投与が必要だと思っています。これだけの瘤を形成しながらもstent血栓症を起こさなかったのはこれまでも2剤の抗血小板剤の投与を続けてきたからではないかと考えます。
Fig. 3 3.5 years after Cypher implantation

この瘤の血管径はIVUSで見ると6mm程度あります。distal edgeの血管径の2倍です。拡張した部位でも内膜は観察可能なので真性瘤です。仮性動脈瘤ではありません。拡張時にruptureしたことが原因ではないと判断できます。stent血栓症は2剤の抗血小板剤で防ぐとして、このまま瘤が拡大して破裂の可能性はないのでしょうか。3DCTで経過を見て、冠動脈瘤が縮小したというcase reportもあり、そうした経過に期待したいところですが油断禁物です。今回学習したstent植込み後の冠動脈瘤形成のCT所見をしっかりと頭に入れて、気をつけて見てゆかねばなりません。
Fig. 4 IVUS image at distal stent

Fig. 5 IVUS image at stent body

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