2015年6月2日火曜日

私の目指す心房細動患者に対する抗凝固療法 Anticoagulation at minimum bleeding risk for Atrial Fibrillation(番外編) TTRの高い施設ではNOACでの成績も改善する? 薬剤だけではない医療や地域の力 

図1は2015年5月30日付当ブログ「私の目指す心房細動患者に対する抗凝固療法(3)」に載せた図です。この図1はDabigatarnのWeb siteに載っていたTTR 別の脳卒中/全身性塞栓症の発生頻度から頭蓋内出血の頻度を引き算して作ったものです。このWeb siteではどのようなTTRであってもDabigatran300㎎は脳卒中も頭蓋内出血を減らしたと記載されています。しかし、虚血性に焦点を当ててグラフを作るとTTRが良くなると虚血性脳卒中/全身性塞栓症はTTRが上がるにつれて改善し、72.6%以上のTTRの施設ではDabigatran 300mgの群よりも少ないという結果になりました。どのようなグラフを作るかで印象は変わり、嘘ではなくても虚血性も出血性も含むことであたかも脳塞栓症が減ったかのような印象を作ることは可能です。

プレゼンする側の意図に左右されずにデータを見る力が必要です。

この図1を見ていてふと気づいたことがあります。Dabigatran 220mg群の虚血性脳卒中/全身性塞栓症もTTRが高くなるにつれて低下しているように見えることです。Dabigatran群では容量調節をしない訳ですから、ワーファリンの様にコントロールの上手い下手が入る余地はありません。では何故TTRの高い施設ではDabigatranの成績もよくなるのでしょうか?

ワーファリンのコントロールが良い施設では服薬アドヒアランスが高いからでしょうか。であれば医師の説明や看護介入・薬剤師の介入で虚血性脳卒中/全身性塞栓症が減らせるのかもしれません。医療者の力で減らせるのならなんて素敵なのだろうかと考えます。

ただ服薬アドヒアランスだけの問題なのかどうかはわかりません。施設のTTRの値を規定している因子はただ一つ地域だったそうです。図2にTTRの高い順に並べた各国のTTRのグラフを示しました。コントロールの良い上位の国には北欧・北米の国が並びます。一方、下位の国にはアジア・南米の国が並びます。日本は残念ながら下位グループです。

高血圧や糖尿病の管理、地域の衛生状態や、教育水準など様々な要素がこうした結果と関係しているかもしれません。簡単ではないかもしれませんがこうした要素は人間の力で改善できるものばかりです。薬剤の効果だけではなく、成績をさらに向上するプラスアルファを見つけて、医師だけではなく薬剤師や看護師といった医療者や地域の力でさらに良い成績を目指したいものです。

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