普段はAd hoc PCIが多いのですが、本日のケースではAd hocにしませんでした。安静時に30分位持続する胸痛があった方です。診断カテでは#12に高度狭窄を認めます。AD hocにしなかった理由は左冠動脈主幹部に不整形の狭窄を認めたからです。石灰化した回旋枝にステント植込みを行うとなるとカーブの大湾側に間違いなくストレスがかかります。小さな回旋枝を拡げに行くことで主幹部にリスクを冒すのは割に合わないと考えたのです。
診断カテが終了し、どう治療すべきか良く考えさせてくださいとお話ししました。当初は内科的な治療かなと思っていましたが、診断カテ後に毎日のようにニトログリセリン舌下が有効な 胸痛を自覚されます。であればPCIをするしかないと腹をくくりました。
今回のPCIの最大の注意点は左冠動脈主幹部に問題を起こさないことです。前下行枝にワイヤーを進め、LMTをIVUSで評価しました。単独の病変であればPCIをするほどの狭窄ではありません。
このLADへのワイヤーを残したまま#12にwiringし、前拡張、DES植込みを行いました。石灰化したクランク状の植え込みですので、なかなかステントはデリバリーできませんでした。狭窄のある主幹部にガイディングカテを強く押し込みながらのデリバリーでなんとか植込みには成功しました。
回旋枝への植込み後の造影では主幹部の造影像に悪化は認められませんでした。
このまま終了するか、ストレスをかけた主幹部にステント植込みをするか、考えました。様子を見るという選択は運を天に任せるような選択だと思えます。急性期に問題を起こさなくても、内膜に刺激を受けた主幹部は急速に狭窄が進行するかもしれません。一方でステント植込み後の結果は、約束されたものです。主幹部という生命に関わる部位へストレスをかけた訳ですから、結果が想像できるステント植込みを選択しました。
内科的な治療を選択するのかPCIを実施するのか、主幹部に手を付けるべきか否か、現場での判断に決まったものはありません。この患者さんの症状が取れ、長期に主幹部の開存が維持されることを祈っています。しかしその際にも繰り返しになりますが、より結果が約束された選択がきっと正しいのだろうと信じています。
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