2015年12月3日木曜日

心房細動患者に実施される2剤の抗血小板療法(DAPT)の期間短縮や中止は冠動脈カテーテル治療医が頑張らないと実現できない


心房細動患者に冠動脈内ステント植込みを行った際の、2剤の抗血小板剤の処方(DAPT)をどうするかの最終回です。

上段の図のEHRA practical guide 2015では、Bare metal stentや新しい世代の薬剤溶出性ステント(DES)を待機的に植込んだ時にはDAPT期間は1ヶ月としています。その後6か月ないし12か月の1剤の抗血小板剤と抗凝固薬の2剤の処方の期間を経て、1年以後は新規抗凝固薬(NOAC)単剤にするというシナリオです。3剤の処方は1ヶ月で十分だというエビデンスも、1年以後はNOAC単剤で良いという十分なエビデンスもありません。

1年以後に関しては複数の研究がスタートしていますし、1ヶ月で十分ではないかという検証試験はもうすぐスタートする予定です。

こうした抗凝固薬を内服している患者でDAPT期間を短縮した場合、出血性合併症は確実に減少するでしょうが、最も大きな懸念は、ステント血栓症のために死亡事故が起きないかという点です。

このシナリオが一般的になった時、ステント植込み後の患者を診ているかかりつけの先生は1年が経過したから抗血小板剤を止めると決断できるでしょうか?ステント血栓症が発生し苦しくなった時に救急で受け入れる形ができていなければ自信を持って中止できないだろうと考えます。もうステント血栓症が発生する可能性は低いけれども、もし発生した時にはすぐに対応するから我慢しないで連絡してくださいと冠動脈のカテーテル治療医がお話ししないとこのシナリオは実現できないのではないかと思います。

循環器診療が専門だといっても循環器領域の中でさえ専門分野の細分化は進行しています。不整脈を専門にする先生や冠動脈のカテーテル治療を専門にする先生といった具合です。不整脈を専門にしている先生が診ている患者さんに冠動脈ステント植込みがなされた場合、DAPT期間の短縮やDAPTの中断はなかなか決断しにくいだろうと思います。

かかりつけ医や不整脈専門医と冠動脈のカテーテル治療医の連携、あるいは急変時の冠動脈カテーテル治療医のバックアップがあってDAPT期間の短縮や中止は可能になると考えます。そう考えれば、日本循環器学会の心房細動治療ガイドラインにステント植込み後の患者の管理について記載がないのも頷けます。冠動脈カテーテル治療を専門にする医師が委員になっていないからです。

来るべき改訂版では、カテーテル治療医も参加してこの分野のガイドラインが日本でも完成するように願っています。

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