2010年12月14日火曜日

薬剤溶出性ステント植込み後1カ月で再狭窄をきたした透析患者の1例

Fig. 1 just after stenting on 8, Nov. 2010
患者は6年間、糖尿病由来の腎症で透析を受けておられます。2009年12月に右冠動脈入口部の狭窄のためTAXUS stent植込みを行いました。半年後の造影で再狭窄はなかったのですが2010年11月安静時の胸痛があり造影したところ同部は完全閉塞になっており再度PCIを行いEndeavor stentの植え込みを行いました(Fig. 1)
この2度目のステント植込み後1カ月も経過していないのに先週より透析中に胸痛を訴えるようになりました。回旋枝にも狭窄が残存しているためこちらが原因だろうと考え、本日造影を行いました。予想は裏切られ右冠動脈近位部ステント内の90%狭窄です(Fig. 2)。sub acute thrombosisやlate thrombosisで完全閉塞になる方はおられますが、このような狭窄となって1カ月後に再来される方は経験がありません。何が起きたのでしょうか?
Fig. 2 before PCI on 14, Dec. 2010
Fig. 1の矢印の部位は上に凸の屈曲でバルーンで拡張してもその屈曲は取れません。また、同部には高度の石灰化を初回PCI時から認めています。Fig 2の狭窄部はまさのその場所です。石灰化した屈曲が支点となってstent fractureを起こしたのでしょうか。stent fractureは以前にも書きましたが造影よりもCTでよく判明します。CTでfractureなのかどうかを見てみたいとも思いましたが、カテも入っているのにPCIもせずにCTという訳にもいきません。今度はPROMUS stentを植え込みました。
当院にPCIの研修に来ている鹿大のK先生の話では、鹿大でも植込んで間もないEndeavor stentのfractureがあったそうです。以前、ステントの耐久性は10年間分の振動に耐える振動試験を経てFDAで認可されると聞いたことがあると書きましたが、日本の厚生労働省も冠動脈ステントの承認申請にあたって10年分の振動に耐えるように4億回の加速試験を行った結果を添付するように求めていました。しかし、ステントの添付文書にはこの加速試験の結果は記載されていません。「ステントは一生大丈夫なものですか?」という質問は患者さんからよく聞かれます。少し調べればすぐに分かる形で厚生労働省やメーカーは10年間分の加速試験の結果を公表すべきだと思います。また、10年もたずにfractureが多発しているわけですから、試験方法が妥当であったか、認可に問題はなかったかを厚生労働省やFDAは検証する時期にきているような気がします。

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