2011年10月27日木曜日

「甦る腎臓」を活かす看護介入の力

Fig. 1 chest X-ray before PTRA
 2011年9月2日付の当ブログ「心配すると杞憂に終わり、油断すると痛い目に合う」に書いた方が再入院です。ビビりながらPTRA実施した方が再入院です。前回40㎏で退院したのに44.7㎏まで体重が増えたからです。呼吸困難もなければ、下腿の浮腫もありません。しかし、この状態で外来で診ていると呼吸困難で夜間に緊急入院になります。急性の呼吸困難を見越した予防的な入院です。
Fig. 2 chest X-ray after PTRA
怖い思いをしながら実施したのに体重が増え、呼吸困難を起こすのであればPTRAは無駄だったのでしょうか?Fig. 1はPTRA実施前に呼吸困難で入院した時の胸写です。肺うっ血が著明です。この時の体重は40.5㎏で心エコーで評価した推定右室圧は54㎜Hgです。Fig. 2は今回の入院時の胸写です。体重は44.7㎏ですが肺うっ血は認めません。推定右室圧は37㎜Hgです。より大きな体重でも推定右室圧は低く、呼吸困難を起こしていない訳ですからやはりPTRAの効果があったと思います。
Fig. 3 Lt-kidney 5m before PTRA
Fig. 3は、PTRA5か月前の左の腎臓です。長径が7.74cm、短径が3.40cmと萎縮しており左の腎臓へのPTRAは意味がないのではないかと考えていた頃です。Fig. 4は左腎動脈へのPTRA後1か月のものです。長径が8.73cm、短径が4.06cmですからいずれも10%以上も萎縮が改善しています。この程度の改善であれば有意な改善と考えてもよいと思います。PTRA後の「甦る腎臓」です。
Fig. 4 Lt-kidney 1m after PTRA

では体重増は何故でしょうか。奥さんに伺うと、奥さんが仕事に行っている間に冷蔵庫を開けて自由に水分を摂っているそうです。これは何度、するなと言っても聞いてくれません。また、奥さんには毎朝、体重を測って、急に1-2㎏増えたらすぐにハートセンターに連絡するように指導していましたが、前回の入院前には測ってもくれませんでした。本人は水分制限をしないで自由に水を飲み、奥さんは体重も測ってくれないという中で、看護師さんが始めてくれた試みは、毎日、ご自宅に電話し、体重を聞くことです。こうされれば奥さんも体重を測らない訳にはいきませんし、何時か本人も水分の過剰摂取は止めてくれることでしょう。
患者さんや家族に対する指導にとどまらない、体重を電話で確かめに行くという看護介入です。
2011年4月13日付当ブログ「繰り返す心不全患者さんに対する看護介入の力を信じましょう」に書いた看護介入の発展形です。今回の入院も4㎏増の時点で入院を決めました。こうした看護介入の力がこのかたの繰り返す心不全の問題を必ず解決すると信じています。
「甦る金狼」の主役は松田優作さんが演じましたが、「甦る腎臓」の主役は言うことを聞かない松田優作さんとは似ても似つかない患者さんです。この患者さんに看護師さんが介入し、「甦った腎臓」を活かしたいものです。

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