2012年6月4日月曜日

PCI後のフォローアップをどうすべきか、冠動脈インターベンション医も、もう結論を出さないといけません

2012年6月1日から3日まで開催された第29回小倉ライブに行ってきました。前日には1985年から開催されている九州虚血性心疾患研究会にも久しぶりに参加してきました。テーマは「心臓CTが有用であったPCI」です。この中で、私は、PCI後のフォローアップ目的の冠動脈造影はほぼ不要で、CTで代替で良いのではないかとの発言をしました。至極当たり前の発言だと思っていたのですが、座長の先生が原則CTのみでフォローしている施設はどのくらいありますかとフロアに問いかけたところ参加施設の1割程度しか挙手がなかったので驚きました。

図は日本循環器学会の「冠動脈病変の非侵襲的診断法に関するガイドライン JCS2009」の中のPCI後のフォローアップのページです。この中でエビデンスもなしに多くの施設で再狭窄の有無を見るために冠動脈造影が実施されていると批判的に記述されています。循環器学会の公式のステートメントでエビデンスもなしに実施されていると批判されている検査を行ってきたわけですから、ずっとこうした姿勢で冠動脈造影を実施していることに罪悪感を持ってきました。その中で、64列MDCTに更新したこと、Xience VやPROMUSで驚くほど再狭窄が減少したことを受けて2011年2月から原則としてPCI後のフォローアップ目的で冠動脈造影を実施しないと決断しました。(2011年2月3日付当ブログ「PCIの6か月後の冠動脈造影」

技術的な進歩によって、患者の経済的な負担や肉体的な負担を減少させ、日本の医療費も減少させといいことばかりですが、一方でこの選択が医療機関の経営の首を絞めないかとも危惧していました。結果は、フォローアップ目的の冠動脈造影をCTで代替しても、損益には全く影響しませんでした。(2012年3月27日付当ブログ「64列MDCT導入後の収支の変化」

心臓CTでPCI後のフォローアップを代替することで鹿屋ハートセンターの収入は約4千万円減少しましたが収益は減少しませんでした。年間200件足らずの当院で4千万の医療費の削減ですから20万件を超える日本のPCI市場に当てはめると400億円以上の医療費の削減が可能ということになります。

循環器学会の公式ガイドラインでエビデンスもなく実施されていると批判されているPCI後の冠動脈造影はCTで代替できないのか、代替することでどれほどの医療費の削減が可能で、かつ各医療機関の経営にはどのような影響をもたらすのか、当院のような小さな施設だけの検討ではなく日本全体での検討が必要だと改めて感じています。

3 件のコメント:

  1. いいね!×無限大です

    当施設も原則CTフォローです。お陰様で病棟がガラガラになりましたが・・・。

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  2. こてつ様
    コメントをありがとうございました。当院でも病棟はガラガラになりました。
    いかに、不要な仕事で忙しかったのかと思います。
    リストラをするつもりもありませんが、医師不足・看護師不足の問題にも余計な検査をしないことが寄与するかも等と思っています。

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  3. そこなんです!医師不足の当地域においては、CTAが循環器医療を救う可能性がある!と思ってます(言い過ぎでしょうか・・・)。外来は可能な限りクリニックに依頼して、ACSなどの緊急対応に人員を割くようにすれば2-3人の常勤医でも充分質の高い診療が可能と考えます。CTA firstのスタイルにすると、200件そこそこのPCIでは忙しい感じがしませんよね。

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