体重管理ができずにいつも体重を増やしてこられるので、確かに小言をよく言っていました。私が叱ってばかりで嫌だったら、透析を受けている病院ででも心臓を調べてもらうとよいねとお話ししましたが、そこで検査をしても心臓が少し腫れているねと言われる程度で、ちゃんと検査を受けなさいとも、食事の管理をもっとしっかりしろとも言われない。今となっては叱ってもらっていた鹿屋ハートセンターの方が良かったかもと言われました。
PCIを実施して間もない方で、まだ2剤の抗血小板剤を2週間ごとに処方している方が3週間後に来られると、今日まで薬は間に合いましたか、ちゃんと内服していましたかと尋ねます。間に合うはずもありませんし、ちゃんと内服していたはずもありません。でもほぼ100%の方がちゃんと内服していたと言われます。ここが詰まれば命がないという場所にステントを置いた場合など、ちゃんと内服していないと死んでしまうぞと、脅しではなく、つい、口調がが強くなります。
左室拡張末期径が80㎜で左室駆出率が20%という方が、内服もちゃんとしないで、徹夜マージャンの上、酒も飲んでという生活を続けておられました。どんな神経でそんなことをしているのだと叱りました。するとその方は、「新井はうるさいから通わない」と言われ、その後、心不全で亡くなりました。
医療は形のあるテレビなどの機器を販売するビジネスではなく、医療という無形のものを提供する仕事です。この無形のものを提供するビジネスをサービス業と言いますが、サービス業というのはお客さんに媚びる仕事のことを言うのだと誤解する人がいます。このため、お客さんである患者を叱るとはどういうつもりだと怒る患者さんもいらっしゃいます。媚びる仕事に徹して、内服をちゃんとしない方に「ちゃんと内服するのは難しいから仕方がないよね」と言ったり、水分をがぶ飲みされる方に「暑くて喉が渇くから仕方がないね」と言ったりが良いのでしょうか。ただ歩くのもふらふらする方が「眠れないから睡眠剤をくれ」と言われたら、転んで骨を折るかもと思っても「つらいでしょうからお薬を出しておきますね」と言いながらホイホイと処方箋を書くことが良いのでしょうか。私にはとてもできません。
お昼に久々に出会った方が、叱ってもらっていた頃が良かったと言ってくれたのが救いです。「新井はうるさいから通わない」と言って亡くなってしまえば元も子もないので、そこまではしなくても「小言を言ってもこの人に元気で長生きしてほしい」という愛情と熱意を持ってうるさくあり続けようと思っています。
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